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【奈良】剣聖の里 奈良市柳生町

ジャンル・エリア : 文化 | 歴史 | 近畿  2015年05月28日

奈良県内では唯一の武家屋敷の遺構という旧柳生藩家老屋敷

奈良県内では唯一の武家屋敷の遺構という旧柳生藩家老屋敷

石舟斎の神業伝える石

 剣聖の里、奈良市柳生町は、東大寺などがある市中心部から北東へ10キロ余り、自然豊かな山あいにある。素手で相手の剣を奪う「無刀取り」で知られる新陰流二世、柳生石舟斎は徳川家康から剣術指南を求められ、後の柳生家発展の礎を築いた。時代劇ブームが去り、交通の便が悪いことから観光客はさほど多くないが、歴史マニアにとっては、ぜひ訪れたい場所である。

 平地が少ない中、田畑を確保するため、民家は山裾に点在。集落の高台には、江戸時代末期に建てられた旧柳生藩家老屋敷(県指定文化財)が残る。立派な屋敷は、「徳川家康」などの作品を残した小説家、山岡荘八が昭和中期に買い取って滞在。1970年代の柳生ブームを引き起こしたNHKの大河ドラマ「春の坂道」の原作を執筆したことでも知られ、柳生家系図などとともに紹介している。

 この地の観光は、ある程度、歴史の予習をしておくと味わいが深まる。高台にある旧柳生藩陣屋跡は、公園に姿を変えていた。柳生家の墓がある芳徳寺は、向かいの高台にあり、有事に備えての配置。坂道を上ったり、下りたりで、いい運動になる。

柳生石舟斎が切ったとされる「一刀岩」=いずれも奈良市柳生町で

柳生石舟斎が切ったとされる「一刀岩」=いずれも奈良市柳生町で

 石舟斎に関する史跡で有名なのが「一刀岩(いっとうせき)」。陣屋跡から700メートルほど坂道を上ると剣術修行の場所でもあった天石立(あまのいわたて)神社があり、その先にある。約7メートル四方の花こう岩が、真ん中辺りで真っ二つに割れている。石舟斎が修行中に、天狗(てんぐ)と思って切ったとされているが、どうみても人間業とは思えない。なのに、こうした伝説があるのは、それほど傑出した人物だったのだろう。周辺には、巨石がごろごろしていて、ほかにも裂け目のある大きな石があった。

 過疎の影響で柳生中学校は今春、閉校となったが、元武道場から、剣道のけいこをする子どもの声が聞こえてきた。のぞいてみると、指導者を含め4人だけ。かつて、この地に多くの修行者がいた面影は、すっかりうせていた。

 市営駐車場の近くには、地元野菜の無人直売所。その隣の茶店で名物の赤米と黒米を使った「茶がゆ」(770円)を注文した。副菜は、漬物と野菜の煮付けだけ。「修行中の侍たちも食べていたのかな」と江戸時代に思いをはせながら、いただいた。 (富永賢治)

剣聖の里の名物「茶がゆ」

剣聖の里の名物「茶がゆ」

 ▼メモ 剣聖の里へは、JR奈良駅からバスで約50分。無料の名阪国道・五月橋ICから車で約30分。旧柳生藩家老屋敷の観覧時間は午前9時から午後5時。入館料は高校生以上350円、中学生以下170円。年末年始のみ休館。問い合わせは柳生観光協会(電)0742(94)0002

(中日新聞夕刊 2015年5月28日掲載)

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