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【三重】「潮騒」の舞台たどる 三重県鳥羽市

ジャンル・エリア : サブカルチャー | 三重 |   2015年11月05日

路地裏にある島の時計台。さらに奥には三島が滞在した寺田さん宅がある

路地裏にある島の時計台。さらに奥には三島が滞在した寺田さん宅がある

三島の名文 風景に重ね

 三重県鳥羽市の神島は三島由紀夫の小説「潮騒」の舞台として知られる。島の若い漁師・新治と海女の初江が多くの困難を乗り越えて純愛をはぐくむストーリーで、三島文学の中でも異色の作品といわれている。5度も映画化されて、いずれもこの島でロケが行われた。物語に登場する場所をたどる島1周の約4キロの約2時間コースを歩いてみた。

 鳥羽市営定期船で神島漁港に到着して、島の名物たこ飯で腹ごしらえをしてから出発。路地裏に入ると島の時計台。坂道を行くと、三島が滞在していた寺田さん宅がある。20代だった三島は、島を2度訪れて、港と海が一望できるこの2階に滞在して、取材を重ねた。

 映画「潮騒」で、歴代の初江役は、青山京子、吉永小百合、小野里みどり、山口百恵、堀ちえみ。中でも1964年に製作された2作目の吉永の人気がこの島では根強い。ロケ中、気さくに島の人々と触れ合ったといい、案内板は若き日の吉永の写真が多い。

 214段の急な石段を上ると新治と初江が愛を誓った八代神社。樹林帯をゆっくり上ると視界が開けた。眼下には伊良湖水道を行き交う漁船が見え、エンジン音まで聞こえてきそうだ。曇りだったが、篠島など伊勢湾の島々も望めた。やがて2人が愛をはぐくんだ神島灯台が見えてきた。

「潮騒」のクライマックスシーンの舞台となった監的哨の屋上から大海原を望む

「潮騒」のクライマックスシーンの舞台となった監的哨の屋上から大海原を望む

 コース各所には「潮騒」の一文を引用したプレートがある。周囲の景色と見比べてみると、三島の風景描写の的確さと文体の美しさに驚く。さらに、映画のシーンの写真もそえられ、こちらは若き日の吉永の美しさにびっくり。

 歩き始めてから1時間、クライマックスのシーンの舞台となった「監的哨(かんてきしょう)」に着いた。旧陸軍が伊良湖からの試射砲の着弾点を確認するために建てた鉄筋コンクリート2階の建物で、中に入ることができる。嵐の日に愛を確かめ合った場所で、初江が新治に向かって「その火を飛び越して来い」と言うシーンは有名だ。屋上に上ると渥美半島などの展望が広がる。大海原を見つめていた年配夫婦は「三重県に住んでいますが初めて来ました。歩きながらの島巡りは気分がいいですね」と笑顔だった。

 樹林帯では、渡りのチョウと呼ばれるアサギマダラに出合った。羽のエメラルドブルーは海の色のようだった。ニワの浜、古里(ごり)の浜と続き、ゴールの神島漁港へ。2年前、吉永は49年ぶりにこの島を訪れた。漁港近くで見た色紙には「潮騒の島の美しい海 太陽のかがやき 神島のみなさまの温かい笑顔をいつまでも忘れません」とあった。三島が追い求めた「美」に吉永の面影を重ね合わせながらの歩き旅はさわやかだった。 (柳沢研二)

アザミのみつを吸うアサギマダラ=いずれも三重県鳥羽市神島で

アザミのみつを吸うアサギマダラ=いずれも三重県鳥羽市神島で

 ▼メモ 神島へは、近鉄名古屋線・JR参宮線の鳥羽駅下車、徒歩8分で佐田浜港。市営定期船で神島漁港までは約40分。1日往復4便。片道730円。愛知県田原市の伊良湖港からも観光船が出ている。鳥羽市観光課(電)0599(25)1157。今回は近鉄の秋と春に開かれる鳥羽の離島巡り「汐風(しおかぜ)ハイキング」に同行した。15日には答志島で開かれる。近鉄名古屋駅営業所(電)052(561)4986

(中日新聞夕刊 2015年11月5日掲載)

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