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【静岡】艦船プラモの箱絵 浜松の故上田さん作6000点超

ジャンル・エリア : 乗り物 | 展示 | 芸術 | 静岡  2016年09月26日

上田毅八郎さんが描いた艦船や車の絵を並べる星野順啓さん=浜松市中区で

上田毅八郎さんが描いた艦船や車の絵を並べる星野順啓さん=浜松市中区で

◆静岡市で来月追悼展「戦争知るから描ける世界」

 艦船プラモデルの精巧な箱絵で知られた海洋船舶画家上田毅八郎さん=浜松市東区=が、6月18日に95歳で死去した。太平洋戦争を生き延び「亡くなった戦友たちのため、思い出を描くことが使命」と残した作品は6000点超。親交があったグラフィックデザイナー星野順啓(のぶあき)さん(51)=磐田市=は「巨匠の功績を知ってほしい」と、10月1日に静岡市内で始まる追悼展の準備を進める。

 白波を立て、大海原を切り裂くように進む戦艦大和や空母信濃。そびえ立つ艦橋、風になびく旗、さらには赤さびた船体の側面までが細かく描き込まれている。国内外の艦船を700分の1サイズで模型化してきた「ウォーターラインシリーズ」(WLS)。星野さんは「上田さんの箱絵を頼りに、リアルな塗装や造形を夢見たファンは数知れない」と少年時代を振り返る。

 上田さんは藤枝市生まれ、静岡市育ち。20歳を迎えると陸軍に召集され、船舶砲兵として3年8カ月間で計26隻に乗った。機械を描くのが好きで、上官の目を盗んでは船上から見える艦船を軍事郵便にスケッチし腕を磨いたという。1944年にフィリピン・マニラで受けた爆撃で右腕を負傷。戦後は50代まで塗装業を営み、利き腕ではない左手で筆を握った。

 模型業界に携わったのは71年ごろ。近所に住んでいた大手メーカー・タミヤの田宮俊作会長の目に作品が留まり、WLSの箱絵などを手掛けるようになった。図面や写真を調べて航行速度や経験から波模様を計算し「7つの海を描く男」とまで呼ばれた。

自身が描いた艦船の絵を手にする上田毅八郎さん=2010年、浜松市東区で

自身が描いた艦船の絵を手にする上田毅八郎さん=2010年、浜松市東区で

 戦時中の艦船は戦艦や駆逐艦が「花形」だが、「上田さんのライフワークは輸送船」と星野さん。多くの兵士を激戦地に送り込み、上田さん自らも6度の撃沈を経験。仕事場を星野さんと訪れた学生らには、船が被弾した際の光景を必ずといっていいほど語った。「さっきまで話していたヤツの肉片が目の前を飛んでいった。忘れないでほしい」

 追悼展は10月1~9日に、静岡市駿河区南町の静岡ホビースクエアで(3日休み)。WLSを共同開発するメーカー3社(青島文化教材社、タミヤ、ハセガワ)の静岡模型教材協同組合が主催。上田さんが担当した箱絵約200点のほか、帆船やクラシックカーを描いた絵なども飾る予定だ。星野さんは「戦争を知るから描ける世界。ファンはもちろん、絵を志す若い人や地元の浜松市民にも見てほしい」と願う。

 入場料500円(中学生以下無料)。1日午後1~2時には遺族主催の「偲(しの)ぶ会」がある。

(久下悠一郎)

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