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【福井】北前船主通り 福井県南越前町

ジャンル・エリア : 文化 | 歴史 | 福井  2017年01月05日

西洋館は国内にある洋館の傑作の1つといわれる

西洋館は国内にある洋館の傑作の1つといわれる

繁栄物語る豪華な洋館

 福井県南越前町河野は江戸から明治期にかけて日本海の海運で栄えた北前船船主たちを生み出した。船主の家が集まる長さ約200メートルの「河野北前船主通り」があり、このところバスツアーのコースに組み込まれるなど人気が出ている。

 咲き始めたスイセンに迎えられ、日本海5大船主の1つ右近家の邸宅を資料館として公開している「北前船主の館 右近家」を訪ねた。明治期に建てられた同家の玄関を上がると船の模型やのぼりがあって壮観だ。船関係の資料も豊富で「平地が少なく農業に向かない河野では、もともと船で荷物を運ぶ仕事をしていた」とガイドがわかりやすく説明してくれる。

 裏口に出て急な階段を時雨に打たれながら数分上ると、山の中腹で海に向かって張り出すように立つ洋風の別荘にたどり着いた。これが1935(昭和10)年に建てられた「旧右近家住宅西洋館」だ。扉を開けると暖炉とソファがあり、鉛色をした日本海の激しい波の音が聞こえてきそうだ。

 おもむろに女性がバイオリンを持ち出し、海に向かって弾き始めた。「川の流れのように」などをかなでてくれ、居合わせた若い女性たちは、うっとりしている。

傾斜地に立つ旧右近家住宅西洋館からは「河野北前船主通り」や日本海を望むことができる=いずれも福井県南越前町で

傾斜地に立つ旧右近家住宅西洋館からは「河野北前船主通り」や日本海を望むことができる=いずれも福井県南越前町で

 こちらも妄想に浸る。設定は高台にたたずむ別荘で帰るあてのない男性を待つ女性。バイオリンなら川井郁子の「嵐が丘」だろうな。古いピアノもある。夏だったら海風を受けながら大貫妙子の「黒のクレール」もいい-。演奏を終えたバイオリニストの大久保ナオミさんが声を掛けてくれてわれに返った。ここでミニコンサートを開いたことがあるといい、今回は特別に演奏していたようだ。「音の反響がすごく良くて、演奏する方も気持ちがいい」と話していた。

 この西洋館は国内にある洋館の最高傑作の1つで国の登録有形文化財。1階はスパニッシュ風、2階は和洋折衷の造りになっている。恋人や夫婦はもちろん、1人でも夢を見ることができる不思議な空間だ。

 右近家に並ぶ船主だったのが中村家で、住宅が一昨年に国の重要文化財に指定された。イベントの時などに特別公開されていて、幕末の越前福井藩主、松平春嶽の書などもある。将来的には資料などとともに一般公開する方向だという。

 右近家の敷地内にある「カメイ珈琲(コーヒー)店」で香り高いコーヒーを味わった。2階の和室からは海を望みながら、ゆったりできる。先ほどまで激しい雨だったのが、鉛色の雲間から一条の光が海面に向かって延びている。うなだれていたスイセンのつぼみが少し頭を持ち上げたような気がした。 (柳沢研二)

 ▼ガイド 北前船主の館右近家は午前9時~午後4時で高校生以上500円、小中学生300円。案内希望者は1週間前までに電話などで申し込む。案内料は1~4人で1人100円。(電)0778(48)2196。同家敷地内には「カメイ珈琲店」とともに観光案内所「どっときたまえ」がある。中村家の公開は14、15日、3月18、19日で入場無料。河野観光協会(電)0778(48)2240

(中日新聞夕刊 2017年1月5日掲載)

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