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【岐阜】山之村 岐阜県飛騨市神岡町

ジャンル・エリア : 展示 | | 岐阜 | 自然  2017年08月03日

山に寄り添うようにひっそりと立つかやぶき屋根の民家

山に寄り添うようにひっそりと立つかやぶき屋根の民家

郷愁感じる天空の山里

 北アルプスから流れ出る双六谷から、つづら折りの林道を上ると入道雲の湧き上がる空が、どんどん近づいてくる。10キロほど走って峠を抜けると一気に視界が開けた。岐阜県飛騨市には古くから「山之村」と呼ばれる山里がある。

 山之村は同市神岡町伊西、森茂などといった7つの地区を合わせた通称で、標高約1000メートルの高地にあり「天空の隠れ里」と形容されることもある。まず立ち寄った小さな道の駅といった雰囲気の夕顔の駅前に「中河与一(なかがわよいち)文学資料室」があった。

 中河与一(1897~1994年)は戦中戦後にわたって150万部を超えるベストセラーとなった小説「天の夕顔」の作者として知られる。小説では悲恋にくれた主人公の青年が、庵(いおり)を結んで冬ごもりをするのが、この山之村となっている。モデルとなった男性もこの地に実在していた。20余年にわたる交際の末の叙情的なラストもこの地が描かれ、今でも色あせることなく読み継がれている。西欧諸国などでも翻訳され文豪カミュが激賞したとされる。

 それでも資料室は訪れる人が少ないようで中は真っ暗だ。おそるおそる中に入ると、明かりがついた。「天の夕顔」の直筆原稿や愛用の品が展示されている。80年近く前に発表され、山之村の冬など奥飛騨の厳しい自然や暮らしが描かれている。

 夕顔の駅では地元で栽培された「だったんそば」(大盛り1000円)を味わった。「高地で育つという黄色がかったそばなんです」と同駅の小萱真里子さん。口にすると、しっかりとこしがあった。新鮮な夏野菜の天ぷら(300円)とともに味わうのがお勧めだ。

山之村牧場では散策しながらヒツジとふれあうこともできる=いずれも岐阜県飛騨市で

山之村牧場では散策しながらヒツジとふれあうこともできる=いずれも岐阜県飛騨市で

 中河の描いた山之村とは、対照的な観光スポットもある。ヨーロッパ風の山之村牧場で、ジャージー牛が20頭飼育され、牧場内にレストランやハム・ソーセージ工房、パン工房などが点在する。ソーセージバイキングはこんろを使い、工房で作ったソーセージが味わえる。バイクツーリングのグループや家族連れが楽しんでいた。

 森茂峠方向に歩くと、かやぶき屋根の家があった。同県白川村の合掌造り集落と違って、こぢんまりとしたたたずまい。屋根からは草木が芽吹き、玄関の木戸の傍らではアサガオが空に向かって伸びている。ソバの花が風に揺れた。いにしえの奥飛騨に少し触れたような気がした。 (柳沢研二)

 ▼ガイド 夕顔の駅は午前8時半~午後4時半で基本的に月、火曜休み(8月は不定休)。特産の寒干し大根、白たまごと呼ばれる地豆などのお土産もある。中河与一文学資料室も同じ時間帯で入場無料。(電)0578(82)6661。山之村牧場は午前10時~午後5時で水曜休み。入場無料。ソーセージバイキングは1800円、小学生1500円、幼児500円。ジャージー牛乳100%のソフトクリーム(350円)はこくのある味で人気。(電)0578(82)5890

(中日新聞夕刊 2017年8月3日掲載)

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