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【富山】荒波乗り越えた風格

ジャンル・エリア : テーマパーク | 富山 | | 特産  2018年10月04日

立山連峰や新湊大橋をバックに帆を広げて今にも動きだしそうな海王丸=富山県射水市で

立山連峰や新湊大橋をバックに帆を広げて今にも動きだしそうな海王丸=富山県射水市で

 富山県射水市の富山新港に係留されている帆船、初代「海王丸」。今年、「ふね遺産」に認定されるとともに周辺の海王丸パークには展望広場が完成するなど注目度もアップしている。

 海王丸は商船学校の練習船とし、1930年から89年まで地球50周分を航海し、約1万人の海の若人を育てた。90年からこの地に係留され、港のシンボルともなっている。

 訪れた日は年に10回ある29枚の帆をすべて広げる総帆展帆(そうはんてんぱん)の日だった。ボランティアのきびきびとした動きで帆が広がる。穏やかな秋空と立山連峰、新湊大橋をバックにした海王丸に息をのんだ。風をはらんだ白い帆は雪のようで、「海の貴婦人」と呼ばれるのもうなずける。今にも海を走りだしそうな威容だ。

 興奮冷めやらぬまま、現役当時のままの船内に向かうと、家族連れで大にぎわい。船の全長は97メートル、幅13メートルで2238トン。マストは4本あり、メインマストの高さは海面から46メートルもある。

 マストの傍らで日焼けしたボランティアが熱心に案内している。同県高岡市の色部春夫さん(60)で、マストに駆け上がって帆を張る作業をした後だった。船の清掃活動などもしているという色部さんは「この船は富山の宝。手をかければ、手をかけただけ、こたえてくれる人間くさいところが魅力だね」と話していた。

船に乗り込むとその大きさを体感できる

船に乗り込むとその大きさを体感できる

 船内を回ると訓練生の宿泊室があった。2段ベッドが四つあり寝台列車を思わせるような狭い空間。太平洋を幾日もかけての航海の途中、ここでどんな夢を見て、仲間と語り合ったのだろう。モノクロの写真も展示してあり、船上での餅つきや大きなカツオを手に笑顔の船員の姿もあってほほ笑ましい。機関室、調理室と続き、船長は公室、私室と二つもあり、専用の浴室もある。赤じゅうたんの士官サロンの豪華さも印象に残った。

 同パークは「恋人の聖地」にも選定されている。船が2月14日のバレンタインデーに進水したので、多くの恋人たちが訪れているという。出口近くにあった甲板には59年間、訓練生らに時を知らせ続けてきた鐘がある。「幸せのベル」と呼ばれ、この前で結婚式を挙げるカップルもいる。

 これから訪れるであろう人生の荒波を覚悟してか、神妙な面持ちで、鐘を鳴らすカップルの姿があった。2人の船出を祝うかのように立山連峰をバックに帆を広げた海王丸がたたずむ。幾多の試練を乗り越えてきた船には風格があった。 (柳沢研二)

 ▼ガイド 海王丸パークは海王丸のほか、富山湾が望める展望広場、芝生広場、野鳥園などがある。駐車無料、入場無料。夜間のライトアップもある。魚介類がそろう「新湊きっときと市場」も隣接。海王丸乗船は10月が午前9時半~午後5時。水曜(祝日の場合は翌日)休み。大人400円、小中学生200円。年内の総帆展帆は10月14、28日。帆船海王丸記念財団(電)0766(82)5181

(中日新聞夕刊 2018年10月4日掲載)

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