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【三重】松浦家が寄贈した錦絵を公開 松阪の武四郎記念館

ジャンル・エリア : 三重 | 展示 | 歴史  2018年12月04日

武四郎が生きた時代を映す錦絵が並ぶ。手前は「現如上人北海道開拓巡教錦絵」=松阪市の武四郎記念館で

武四郎が生きた時代を映す錦絵が並ぶ。手前は「現如上人北海道開拓巡教錦絵」=松阪市の武四郎記念館で

 松阪出身の探検家で北海道の名付け親、松浦武四郎の実家に残されていた錦絵を紹介する企画展「錦絵の世界」が、松阪市小野江町の武四郎記念館で開かれている。武四郎が生きた幕末から明治初期までの作品が並び、当時の時代背景や風俗、文化を知ることができる。来年1月14日まで。

 記念館近くにある武四郎の実家は旧伊勢街道に面していて、当時は伊勢神宮へ参拝する旅人が行き交い、最先端の流行や文化に触れやすい環境にあった。

 錦絵は木版多色刷りの浮世絵で、カラー写真が普及していない時代に庶民らに人気だった。実家には武四郎や子孫が集めた江戸の都の生活や歌舞伎役者などを題材にした錦絵が100点ほど残っていた。全て記念館に寄贈されており、今回初めて、その中から40点を一般公開した。

 会場には当時大人気の歌舞伎役者、9代目市川団十郎が「水滸伝」を演じている場面や、あでやかな着物姿の女性が茶を楽しむ様子などが鮮やかに描かれた絵が並ぶ。5枚ある美人画は時代が進むにつれ西洋の絵の具が使われ原色に近い色使いになっており、文明開化の影響を見て取れる。

 北海道通として知られた武四郎ゆかりの品もある。明治政府の依頼で北海道の開拓に当たった京都の東本願寺の現如上人(げんにょしょうにん)の活躍を描いた「現如上人北海道開拓巡教錦絵」(県重要文化財)や、北海道にある交通の難所をテーマにした「雷電越の危機」には、武四郎の解説文が添えられている。

 山本命主任学芸員は「北海道といえば武四郎という認識で、解説文があるだけで絵の売れ行きが変わった」と話す。

 西南戦争で士(さむらい)姿の薩摩の軍勢と官軍が一戦を交える場面や日清戦争など、当時の日本を騒がした出来事を描いた絵もある。山本学芸員は「松浦家がどれだけ世相や流行に敏感だったかが分かる。武四郎の生きた時代に思いをはせてもらえれば」と話している。

 (水谷元海)