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【滋賀】「異国の知」希求、明治の教科書展示 東近江の観峰館

ジャンル・エリア : 展示 | 文化 | 歴史 | 近畿  2018年12月21日

浦島太郎の物語を書いたちりめん本=東近江市五個荘竜田町の観峰館で

浦島太郎の物語を書いたちりめん本=東近江市五個荘竜田町の観峰館で

 東近江市五個荘竜田町の書道博物館「観峰館」で、明治時代の英語・世界史の教科書を紹介する「海外の知識を求めて-英語・世界史の教科書-」展と、中国のめでたい書画を扱った「館蔵中国書画-幸福を追求した作品-」展が開かれている。ともに館蔵品を基にした展示で、アイデアが光る。来年1月20日まで。

 「海外の知識を求めて」展は4階で開催。明治時代初期の教科書を中心に63冊を並べた。

 寺前公基学芸員によると、既に幕末には英単語帳や英語の会話文集などがあり、商人が外国人相手の商売のために学んだ。明治10年代には、丸屋善八店(現丸善雄松堂)などが輸入した洋書を使い、外国人宣教師が中高生に英語を教えた。

 明治20年以降は、日本語の解説や例文、長文などが盛り込まれ、今の教科書に通じるスタイルへと発展。シンデレラのようななじみ深い物語も入った。

 日本古来の物語を欧文で書き、版画で色鮮やかな挿絵を添えた「ちりめん本」も見どころ。1900年のパリ万博で高い評価を得るなど、世界的に芸術性が認められ、今回は「浦島太郎」など7冊を紹介。日本人向けの平易な英語学習書として発行された側面からは、当時の英語教育の一端がうかがえる。

さまざまな英語の教科書が並ぶ4階の展示室=東近江市五個荘竜田町の観峰館で

さまざまな英語の教科書が並ぶ4階の展示室=東近江市五個荘竜田町の観峰館で

 明治時代、海外事情を日本に広めるのに貢献した福沢諭吉の著書「西洋事情」も。寺前学芸員は「今後、大阪万博や東京五輪・パラリンピックなど国際的な大イベントも開かれる。かつて日本がいかに苦労して海外の知識を取り入れようとしていたかも感じてもらいたい」と話した。

 「館蔵中国書画」展の会場は5階。展示された20点は、18世紀から19世紀中ごろまでに制作され、いすれも、おめでたいメッセージが込められている。子孫繁栄を意味するつがいの鳥や、富貴の象徴であるボタンの絵を組み込んで、「寿」の文字をかたどった作品など、華やかな雰囲気がたっぷりだ。

 担当の瀬川敬也学芸員によると、中国では喜ばしい言葉と発音が通じる事物が尊ばれる。例えば、ハスは「蓮(れん)」で「恋」に通じ、夫婦円満を意味し、「白菜(はくさい)」は「百財」で裕福さにつながる。瀬川学芸員は「絵のメッセージをくみ取って、楽しんでほしい」と呼び掛ける。

 年内は25日と、27日以降が休館。新年は4日から開館し、7日と15日が休み。入館料は大人500円、高校生・大学生など300円、中学生以下無料。(問)観峰館=0748(48)4141

 (小原健太)