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【三重】石畳巡礼 癒やす春の海 熊野古道・松本峠 熊野市

ジャンル・エリア : 三重 | | 歴史 | | 自然  2019年02月21日

松本峠近くの東屋から七里御浜を望む

松本峠近くの東屋から七里御浜を望む

 三重県熊野市の熊野古道伊勢路の松本峠(標高135メートル)は石畳が多く残り、手軽に古道の雰囲気を味わえるとあって人気が高い。近くには鬼ケ城や花の窟(いわや)など多くの見どころがある。

 JR紀勢線・大泊駅から松本峠を抜けて熊野市駅までの4.1キロのコースを歩いてみた。大泊の砂浜を眺めた後、国道42号を横断すると松本峠の入り口の看板がある。樹林に入ると急斜面にこけむした石畳が続く。木もれ日が降り注ぎ、幻想的な雰囲気に包まれている。側面の石垣もふぞろいの石を緻密に積んである。江戸期に造られたというが、谷筋にかかわらず、よくぞ、ここまで残ったものだ。

 休みながら20分ほどかけて登ると若い女性2人とすれ違った。「峠までもう少しなので頑張ってください。東屋(あずまや)から見た海は、めっちゃ、いい景色でしたよ」と興奮が伝わってくる。その言葉に元気をもらい、速足で行くと竹林の中に等身大のお地蔵様がたたずんでいた。ここが松本峠だ。建てられたその日に鉄砲の名手が妖怪と勘違いして撃ったというお地蔵様。向かって右の足元には、痛々しい跡が残る。

松本峠に続く石畳=いずれも三重県熊野市で

松本峠に続く石畳=いずれも三重県熊野市で

 古道を外れて10分ほど尾根を行くと東屋があった。南には七里御浜が広がる。寒波到来の日であっても、熊野の日差しは力強く感じる。いにしえの巡礼者もこの青き熊野灘と延々と続くなぎさに癒やされたのだろう。

 古道に戻って明治期に造られた石畳を下り、木本地区の中心街へ。その一角にある無料休憩所の紀南ツアーデザインセンターに立ち寄った。ここは明治期に建てられた商家を利用した施設。大きな4連のかまどでいれた熱い番茶をいただいた。座敷や土間でも、ゆったりとくつろぐことができる。

 今回は熊野市駅で歩き終えたが、大小無数の洞窟や絶壁が続く鬼ケ城を巡る約1キロの遊歩道を古道と併せて巡るのもおすすめ。

 熊野の太陽、そして海からパワーをもらった旅だった。

 (柳沢研二)

 ▼ガイド 紀南ツアーデザインセンターは午前9時~午後5時で水曜定休。古道をはじめ、周辺の見どころなども親切に教えてくれる。また地元作家の工芸品や特産品も充実。(電)0597(85)2001。熊野市観光協会(電)0597(89)0100

(中日新聞夕刊 2019年2月21日掲載)