【本文】

  1. トップ
  2. コラム
  3. 旅×食
  4. ひらき

コラム 旅×食

ひらき

INFORMATION 名古屋市覚王山にある人気の洋食屋さん、「ひらき」。古き良き洋食店の味、ボリューム満点、なのに価格はリーズナブルとあって、毎日多くの客で賑わう。平日は常連客が9割以上、週末になると遠方から訪れる人たちも多い。“街で人気の洋食屋”さんは他にもある。だがこちら、なんと創業47年。長年変わらず人気店であり続けるのは並大抵のことではない・・・人気の秘訣は何か?

認識 AWARENESS
 「ひらき」のオーナーは、寺本修義さん(68)。元々洋菓子づくりをしていたが、当時世間で純喫茶ブームが起こり、名古屋にも多くの店ができた。「自分もやってみよう」、気軽な気持ちで喫茶店を始めた。メニューはドリンク中心で、料理の経験も無かったため食事メニューはサンドイッチ程度の軽食のみ。5年、10年と続けるうちに、店を始めた当時の気楽な気持ちは消え、“商売はそんなに甘くない”、現実と直面していた。「単に安いだけでは人は来ない。そんな当たり前のことに気づいたのもこの時期」と寺本さん。そこから料理を独学で学び、食事メニューを強化していくことで他の喫茶店にはないつよみを出していった。


探求 SEARCH
 現在、店には多くの食事メニューが並ぶ。ハンバーグ、イタリアンスパ(もちろん鉄板にのったアレ!)、チキンカツ、ピラフ、等々・・・その数、定食メニューを合わせると60品以上。看板メニューにまで育ったカニクリームコロッケは、常連客はもちろん、これ目当てに遠方から訪れる客もいるほどの人気ぶり。改良に改良を重ね、現座の形になったという。カニクリームコロッケの味を大きく左右する玉ねぎには淡路産を使用。通年の人気メニューのため、八百屋と交渉し、年間を通して安定確保できるようにした。一度にまとめて仕込むため、大きな木べらでクリームをかき混ぜる作業は重労働。「ほら、こっちの手」・・・差し出された寺本さんの右手は、親指のあたりが湾曲していた。集中的に負荷がかかり、長年の積み重ねで曲がってしまったのだという。それでも、「まだ終わりじゃない。改良すべき点があれば、もっともっと良くしていきたい。」 頭が下がる。


実直 HONEST
 私もこの店に通う常連の一人だが、ある出来事が店の姿勢をよく表しているので紹介したい。
その日私は、初めて「鶏の唐揚げ定食」を注文した。テーブルに運ばれてきた皿には、予想以上に大きな唐揚げがごろごろと盛られている。やや圧倒されながら食べ始めると、定員さんがテーブルへ。「すみません、1個載せ忘れちゃったので」と、小皿に載った唐揚げを申し訳なさそうに置いていった。“なんと正直な・・・”私は感心した。1個少なくてもすでに十分なボリュームなのに、と。マスターの実直さがよく伝わり、私はますますこの店が好きになった。この話をマスターにすると、笑い飛ばされた。「そりゃそうだよ、少ないのは失礼。常連さんはよく知ってるしね。」

真剣 EARNESTNESS
 ここで働く店員たちも、そんなオーナーの姿を見ているからか、実によくテキパキとまじめに働く。採用時の秘訣でもあるのかと尋ねると、「特に無いです。とにかく自分が一生懸命やることじゃないかな。それを見ればスタッフもついてきてくれる。オーナーがちゃんとやってなかったら、誰もついてこないですよ。」

信念 BELIEF
 朝6時半に開店。モーニングに始まり、ランチ、ディナーと終日営業。マスターは毎朝4時起きで街の人たちの食生活を支えてくれている。「あと10年はがんばるよ。できるだけ長くやってたいから、健康にも気をつけてるしね(笑)」 さりげなくそこに在り続ける街の洋食屋さん。それはマスターの影の努力と信念の賜物だった。“やり続けること”、“当たり前を繰り返すこと”、それが実は一番難しい。

外観
DATA

ひらき

住 所:  名古屋市千種区山門町2-22
電 話:  052-751-6835
営業時間: 6:30-21:30(21:00 L.O.)
定休日: 日曜
席 数: 28席
客単価: 900円~1,000円

2010年04月13日

取材担当プロフィール

(株)Office musubi 代表取締役 鈴木 裕子
食専門のマーケティング会社を運営。
すぐれた商品を作っていても、“売り方・魅せ方”が分からない生産者や食品メーカーを支援し、作り手と市場を結ぶ。
国内は名古屋と大阪を拠点に、海外はニューヨークに拠点を置き、
現地の食専門家チームとともに日本食品の販路開拓支援、流通改革を行う。
(食べることが生きがい!)
旅コラム
国内
海外