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常滑屋(とこなめや)

INFORMATION 名鉄常滑駅から徒歩8分、「やきもの散歩道」の途中に、風情ある佇まいの「常滑屋」がある。かつての土管工場を改装した店内は、土や木など自然の素材がふんだんに使われ、初めてでもどこか懐かしさを感じる温かさがある。創業1995年、今年で15年を迎えた常滑屋。店内にはカフェスペース以外にギャラリーも併設しており、地元在住陶芸家の個展やライブなどを行なっている。店のコンセプトは、「常滑を愛し、常滑にこだわり、常滑の魅力を伝える」。経営者はいったいどんな人物なのか・・・どんな想いで運営しているのか・・・尋ねてみた。
視点

視点 VIEWPOINT
 この店を運営するのは、伊藤悦子さん。結婚を機にこの地へやって来たのだが、常滑の魅力を“外からの視点”で見るにつれ、「ここには素晴らしいものがたくさんある。もっと発信できるのでは・・・」と感じるようになったという。そんな折、縁あって、近くで酒造会社を経営する澤田研一社長と、この店を共同経営することになった。以来、地元の食材、酒はもとより、常滑焼、それを生み出す陶芸家、そして店を取り囲む歴史・文化薫る風景に至るまで、幅広く発信するようになった。

可能性
可能性

可能性 POSSIBILITY
 「常滑といえば急須が有名ですが、急須づくりは高い技術を要すると言われています。その急須づくりができるのであれば、ここの職人さんたちにはもっともっと可能性がある・・・そう思ったんです。」と伊藤さん。店内の一角に個性的な急須を並べ、訪れた者の目を楽しませてくれている。が、これに留まらない。急須を作った職人たちが、自らが作った急須でギャラリーを訪れた人たちをもてなす(お茶を入れる)というイベントを企画。めったにない貴重な機会を、職人、来訪者の双方が楽しみ、大好評のうちに終えたという。この店は、もはや単なる「食空間」ではなく、地元に眠る宝たちを発信し続けているのだ。

おまかせ
おまかせ
おまかせ

おまかせ ENTRUST
 そんな伊藤さんだから、提供する食へのこだわりも高い。料理はすべて、地元の旬の野菜や魚介類など新鮮な食材を使用。ランチタイムは手こね寿司のセットメニューがあるが、基本はおまかせコース。私は夜のおまかせコース(\3,500)を頂いたのだが、野菜の煮物、落花生を茹でたもの、めじろ(あなごのこと)の煮付け、手こね寿司など、出てくる出てくる、、、その価格から予測する味と量を遥かに超えている。伊藤さん自らが料理を運び、食材や調味料の説明をしてくれる。決して派手さは無いが、温かくて毎日でも食べたくなる料理。食事を頂くうち、ふと最近読んだある記事の一節を思い出した。「生き物の中で、自分が住んでいる土地以外のものを口にするのは人間ぐらい。」ドキリとする一節だった。“本来、人はこういう食生活をするべきなんだろうな”そんなことを思った。おまかせには常にリスクが伴うが、ここは、むしろ“おまかせ”にしたくなる店。ちなみに、昼間のカフェメニューも充実している。京都イノダコーヒーを使用したこだわりのコーヒー、常滑平八堂の和菓子を使った抹茶セットや、常滑焼の急須で入れる煎茶セットなど、ティータイムにも手抜きは無い。

自然体

自然体 NATURAL
 私が店内にいる間、常連客から声がかかり、伊藤さんが話をしに行く場面が何度もあった。地元客、遠方から訪れた客・・・彼女を慕ってここを訪れる人の多さが伺える。“地元発信を担う人”というと、肩に力の入った印象を受ける人も多い。だが伊藤さんは柔らかい笑顔が印象的で、ごく自然体な女性。それが訪れる人を和ませているのだろう。

楽しむ

楽しむ ENJOY
 「気づいたら15年。長く続けるためにも無理はしないようにしてるんです。」という伊藤さん。企画したイベントが好評でも、繰り返しやるかどうかは未定という。「それありきで決めてしまうと、義務感からやることになる。自分自身が楽しめなくなってしまったら、きっと足を運んでもらった人にもそれが伝わってしまうから」。継続することの大変さを知る伊藤さんだからこそ、たどり着いた自分流のやり方なのだろう。ぜひ末永く、続けてほしい。

外観
DATA

常滑屋(とこなめや)

住 所:  常滑市栄3-111
電 話:  0569-35-0470
営業時間: 10:00-16:00、18:00-22:00(金曜のみ)
※夜間は事前予約にて対応可
定休日: 月曜
席 数: 30席
客単価: 昼 1,260円~、夜 2,100円~
URL: http://www.hakurou.com/tokonameya/

2010年06月02日

取材担当プロフィール

(株)Office musubi 代表取締役 鈴木 裕子
食専門のマーケティング会社を運営。
すぐれた商品を作っていても、“売り方・魅せ方”が分からない生産者や食品メーカーを支援し、作り手と市場を結ぶ。
国内は名古屋と大阪を拠点に、海外はニューヨークに拠点を置き、
現地の食専門家チームとともに日本食品の販路開拓支援、流通改革を行う。
(食べることが生きがい!)
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