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千とせ家 伏見店(チトセヤ フシミテン)

INFORMATION 伏見駅10番出口直結「名古屋インターシティ」の地下にある日本料理店、「千とせ家」。八事にある懐石料理の店、「ヤゴト千歳」の系列店で、“本格的な日本料理を気軽に楽しんでもらいたい”をコンセプトに、2008年12月にオープンした。ガラス張りの外観、明るい木調のオープンキッチンスタイル、清潔感溢れる店内は、足を踏み入れるといやが上にも期待が高まる。オープン以来、周辺で働くビジネスマンを中心に人気を集めているこの店は、多くの飲食店が不況に喘ぐ中、平日も多くの客で賑わっている・・・人気の理由を探るべく、店長を訪ねた。

思慮
思慮

思慮
 この店の店長を務めるのは、森田学氏。冒頭でいきなりこんなことを書くとお叱りを受けそうだが、森田氏の印象をひとことで表すならば、“とてもシャイ”であること。取材中、控えめに、言葉を選びながら私の質問に答え、いざ撮影となると、「苦手なんで・・・」と拒否されてしまった。でもそれで引き下がるわけにはいかない私、写真を撮るべく森田氏を追いかけまわしたのだが、応じてくれない。「ならば」、と仕込みをする森田氏を隠し撮りしようと怪しい行動に出たが、店内を忙しく動き回る彼を捉えるのは至難の業。仕舞には、「勘弁してください・・・」と言われる始末。今回、店の写真や料理の写真が多いわりに店長の写真が少ないのには、そんな理由がある。

信念
信念

信念
 会話を通して、「当たり前のことを繰り返すことの大切さ」、「お客様に喜んでもらうため、知恵と技を尽くす」といった彼のつよい信念や熱意が底辺にあることを感じるも、彼は決してそれを主張しない。「俺が俺が」の料理人ではないのだ。威圧感与えることなく、相手にそれを”感じさせる“人柄なのだと思った。

 「店をやっていて、苦労することは?」という質問にも、「え?苦労ですか?」と不思議そうに聞き返す。あまり珍しい質問ではないと思うのだが、私は繰り返し聞く。「毎日長時間労働で、人の管理もしなくてはならない店長という立場は、何かとご苦労も多いかと思い・・・」。すると、「あ、無いですね」と呆気らかんと返ってきた。無理をしてそう答えている、といった風でもない。苦労だと思えば辛い。人間は心持ち次第であると教えられた気がした。

情熱
情熱
情熱

情熱
 そんな森田氏、経歴を聞くと意外な過去が飛び出した。この店に来る前は、八事店に15年勤務していたが、その前、なんと海外に12年も住んでいたのだという。アメリカのサンディエゴに2年、グアムに10年、ともに日本料理の店に務めていたのだそうだ。海外に長く住んだ人が持つ独特の雰囲気を全く感じなかっただけに、この経歴を聞いて驚いた。

 ではもっとさかのぼり、「そもそも料理人になったきっかけは?」と聞いてみると、またもや意外な答え。「小学生の時、テレビであるCMを見たことがきっかです。日本人の料理人が、ごく自然に国際電話をしていて・・・その姿が当時の僕にとって衝撃的だったんです。その時、“僕も料理人になって海外で働くぞ”と思ったんです」。そう、森田氏が海外へ渡ったのは、すなわち幼い頃からの夢を叶えた、ということだったのだ。静なる中に情熱を秘めた森田氏に、客が惹きつけられているのかもしれない・・・そう思った。

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厳選

厳選
 この店、「本格日本料理を気軽に楽しんでもらう」というコンセプト通り、メニューに並んだ酒や食材はどれもこだわり抜いて厳選されたものばかり。社長自らが見つけてくることが多いのだそうだが、魚は店長が柳橋で仕入れ、野菜は契約農家から届けてもらっている。鮮度の高い魚が特にオススメとのことで、「造り盛り」はこの店の定番人気メニュー。季節感のある器に美しく盛られた刺身に、外食の醍醐味を感じる。今の旬は何といっても「鮎」。これもただの鮎ではない。全国から自慢の鮎が集まる「利き鮎会」で金賞を受賞した貴重なものだ。ピンと反ったイキのいい姿にスイカのような香り(鮮度の高い鮎にしかない独特の香り)・・・名古屋では、「千とせ家」以外に2店舗でしか仕入れられないというから、ぜひ皆さんにもご賞味いただきたい。

 鮮度の高い食材+“料理人のひと手間”が、素材の良さをぐっと引き出し、ワンランク上の料理に引き立てている。

憩い

憩い
 取材を終える頃、店に客が入り始めた。楽しそうに酒を酌み交わす仕事帰りのサラリーマンのグループ、仲むつまじくメニューを吟味する老夫婦、カウンターに一人で座る男性客の姿も。働く人たちの憩いの場として、本格日本料理を気軽に楽しめる貴重な場として、今後も客を魅了しつづける店であってほしい。

外観
DATA

千とせ家 伏見店
(チトセヤ フシミテン)

住 所: 名古屋市中区錦1-11-11
名古屋インターシティB1
電 話: 052-219-5035
営業時間: 11:00am-2:00pm、
5:00pm-11:00pm(L.O. 10:30pm)
定休日: 日・祝
席 数: 40席
客単価: 昼 850円  夜 4,000円
URL: http://r.gnavi.co.jp/n009702/

2010年09月08日

取材担当プロフィール

(株)Office musubi 代表取締役 鈴木 裕子
食専門のマーケティング会社を運営。
すぐれた商品を作っていても、“売り方・魅せ方”が分からない生産者や食品メーカーを支援し、作り手と市場を結ぶ。
国内は名古屋と大阪を拠点に、海外はニューヨークに拠点を置き、
現地の食専門家チームとともに日本食品の販路開拓支援、流通改革を行う。
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