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コラム 旅×食

にこみ亭(にこみてい)

INFORMATION 名古屋市覚王山にあるうどん屋、「にこみ亭」。創業38年、味に定評があり、遠方からわざわざ食べに訪れる人も多いという。看板メニューは味噌煮込みうどん。麺は100%手打ち。汁は濃いめのだしをベースに独自ブレンドした味噌を入れて作る。その風味の高さとまろやかな味わいは、大手チェーンでしか味噌煮込みうどんを食べたことの無い人には驚きだろう。店は大通り沿い(広小路通り)にあるが、入口が少し奥まっているため一見客には分かりづらい。知る人ぞ知る名店、なのだ。多くの人が、「一度食べたら戻りたくなる味」と称するその味の裏にある秘密は?こだわりのうどんを生み出す人物とは?・・・

仕込み
仕込み

仕込み
 「にこみ亭」のオーナーは、鈴木清司氏(62)。実家がうどん屋で、幼い頃から店を手伝い、だしの取り方から麺の打ち方まで一通りを習得。そんな環境から、ごく自然な流れで「店を出そう」と思ったのだという。毎朝7時半に出勤。店に着くと、まず生地の準備に取りかかる。生地の分量は気候や曜日などからその日の客数を予測し、決めるのだという。昔はこれが難しかったが、今では経験値からその数をピタリと当てるというから凄い。練り終えた生地はいったんねかせ、そのタイミングでご主人も営業に備え少し休息に入る。開店1時間前の10時になると再び生地を取り出し、麺棒で伸ばし、麺切りの作業に取り掛かる。こうして、開店11時には打ち立てのうどんを提供する準備が整う。

鮮度
鮮度

鮮度
 この店の名物「味噌煮込みうどん」は、1つ1つの材料がこだわり抜かれている。まず麺。こちらは2種類の小麦粉を使用。コシのある麺に仕上げるべく、ご主人が独自に配合。生地に含まれた空気をしっかりと抜くことが大切だからと、何度も何度も練る。「体力も要るし、大変な作業ですね。」と声をかける私に、「いやいや、体力は大して使ってないですよ。頭も使ってないしね(笑)」とご主人。再び無言になり、しばらく練る作業を続けた後、ふとご主人が口をひらく。「うどんの麺は刺身と一緒なんだよね。」・・・ん?刺身??キョトンとする私に、ご主人が言葉を足す。「鮮度が命ってことですよ。刺身を何日も保存したり、それをお客さんに出したりしないでしょ。それと一緒。うちは麺に塩を一切入れないから、その日のうちに出しきらないと。」うどんを刺身に例えた職人さんは、初めてだ。

本物
本物

本物
 次にだし。こちらの店ではムロアジをたっぷり使用し、色も香りも濃厚なだしを取る。「だしの味がしっかりしていれば、余計な塩分を足す必要が無い」のだという。納得・・・。ここに3種の味噌を独自にブレンドしたものを入れる。このブレンドも、ご主人が思考錯誤を繰り返した結果辿り着いたものだ。

 打ち立ての麺は、汁がよく絡むように計算されているから、両者が鍋の中で絶妙に絡み合う。素材にこだわり抜き、余計なものを削ぎ落すことで初めて生まれることで辿りつく「本物」の味。塩分が高いと敬遠されがちな味噌煮込みうどんの汁。だがこの店では、客の多くが思わず最後まで飲みほしてしまうという。客の行動が、完成度の高さを物語っている。

職人技
職人技
職人技

職人技
 「毎日、ただひたすら同じことを繰り返してきただけですよ。」照れくさそうに笑うご主人。だが、単調なことの繰り返しでしか「特別」は生まれない。そしてそれが、「職人技」というものだ。この店の客がご主人の仕込みの姿を目にすることは少ないと思うが、味わいから“何か”を感じ取っていることは確かだろう。

 最後に、ご主人オススメの味噌煮込みうどんの食べ方を伝授したい。味噌煮込みうどんは、やはり「卵入り」がオススメだそうだが、卵が煮えて堅くなる前“生の状態”のうちに、味噌と絡めて食べるのが“通”の食べ方だそうだ。(この方が卵の味がよく分かるゆえ)。さらに、「取り分け用の小皿に卵を溶いて、それにうどんを付けながらすきやきみたいに食べるとおいしいですよ。」と教えてくれた。取材時、特別にそれを用意してもらったが、それは想像以上の味わいだった。感激しながら食べる私に、「何でも食べ方ってあるでしょ。」そう言って微笑んだご主人の笑顔が印象的だった。

外観
DATA

にこみ亭(にこみてい)

住 所: 名古屋市千種区末盛通1-18
覚王山ハイツ1階1
電 話: 052-762-2253
営業時間: 11:00am-9:00pm
定休日: 日曜
席 数: 24席
客単価: 700円

2010年10月13日

取材担当プロフィール

(株)Office musubi 代表取締役 鈴木 裕子
食専門のマーケティング会社を運営。
すぐれた商品を作っていても、“売り方・魅せ方”が分からない生産者や食品メーカーを支援し、作り手と市場を結ぶ。
国内は名古屋と大阪を拠点に、海外はニューヨークに拠点を置き、
現地の食専門家チームとともに日本食品の販路開拓支援、流通改革を行う。
(食べることが生きがい!)
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