【ハンガリー】ドナウ河畔の靴
2018年1月22日
国会議事堂近くのドナウ河畔、とくになにがあるわけでもない場所に向かい、多くの人が歩いて行きます。めざす先に並ぶのは靴をかたどった彫像が60足。男女大人の靴に混じり、子どものものもあります。
ブダペストには多くのユダヤ人が暮らし、大きなユダヤ教会(シナゴーグ)があるなど、街には欠かせない存在でした。国はそんなユダヤ人をもともと保護していました。しかし、ドイツに占領され、ハンガリーのファシズム政党「矢十字党」が政権を握ってから、強制収容所への移送が熾烈を極めました。
この靴はこうしたユダヤ人800人を含む3500人がドナウ河畔で「矢十字党」により銃殺されたことを記憶させるためのモニュメントです。殺された人たちは川に落ち、流されていきました。
なんとも怖ろしい歴史ですが、ここで注意すべきなのはナチスがきて処刑したのではなく、ハンガリー人が同じハンガリー人を撃った事実です。それを語り継ごうとしているのもハンガリー人というわけです。
- 増田 幸弘
1963年東京生まれ
スロヴァキアの都・ブラチスラヴァ在住のフリー記者。
ヨーロッパ各地を取材しながら、日本でも取材。新聞・雑誌に特集記事や連載記事を執筆している。
「プラハのシュタイナー学校」(白水社)や「プラハ カフカの生きた街」(パルコ出版)などの著作がある。
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