魔女と薬草(2)
2015年3月13日
化学薬品の生まれる前の薬はもっぱら薬草に頼っていた。それを担っていたのは、知識ある修道士たちだった。自給自足を原則とした修道院には必ず薬草園があった。民間にも毒草から治療効果のある薬を調合する技を持っていた人々はいたが、大学ができ、医薬分業が始まると、資格のない薬売りや産婆は排除されていった。
☆修道院の薬草園(ヘッセン州ロルシュ修道院)
手前に見える黄色の花はビロードモウズイカ(ゴマノハクサ科)で、咳や湿疹などに効果のある薬草。
☆勉強する修道士(ロルシュ博物館センター)
☆森の洞窟に住む女のところに薬をもらいに来る男性(年代・作者不明)
悪名高い『魔女に与える鉄槌』(1486年)の中で、産婆は魔女以外の何者でもないと非難された。産婆は、産婦のために安産や産後の肥立ちに効き目のある薬草を使っていたが、当時の衛生状態から、死産や洗礼前に亡くなる赤子が多かった。それが産婆のせいにされたのである。
☆産婆の権限に委ねられた女だけの産室風景
☆こんなことがあるのだろうか。「不注意な産婆」(1715年)
ライプチヒ(ザクセン州)に伝わる産婆伝説によれば、産婆は教会から目をつけられないように、熱心なクリスチャンになり、異教の輩につけいれられないように魔除けの守り草をいつも身に付けていたという。
☆ハナハッカ(シソ科)
別名オレガノ。コショウに似た芳香があり、香辛草の代表
☆ニガハッカ(シソ科)
別名マルビウム。葉に強い苦みあがる。根を煎じた者は産前産後の産婦に良い
((3)に続く)
- 西村佑子(にしむら・ゆうこ)
うお座。早稲田大学大学院修士課程修了。
青山学院大学や成蹊大学の講師を経て、現在はモアビートプロモーションの「ドイツセミナー」講師。
これまでに「グリム童話の魔女たち」展(栃木県いしばし町グリムの館)の企画・監修やドイツ魔女街道ツアーの同行講師、
薬草専門誌に連載記事を掲載するなど、ドイツの魔女と薬草にかかわってきた。
主な著書に『グリム童話の魔女たち』(洋泉社)『ドイツ魔女街道 を旅してみませんか?』(トラベルジャーナル)、
『魔女の薬草箱』『不思議な薬草箱』(いずれも山と溪谷社)、『ドイツメルヘン街道夢街道』(郁文堂)など。