"市場"をめぐるさすらい旅
2015年6月 3日
旅だからといって観光ガイドに載っているような名所旧跡やいわゆる観光施設ばかりをめぐっているわけでもない。
どんな町でも、何もない町でも歩いているだけでも僕は大抵満足できる。
そこに見える何気ない文化や生活する人たちの姿を見るのが好きだ。
最近、“市場”(いちば)もひとつの旅の楽しみのキーワードになっている。
市場が持つ賑わいや生活感。オンラインでの買い物が当たり前になっている今、欲しいものは家にいてもほとんどに手に入る。
だから、生身で触れられるそこでしか味わえない“買い物”という体験の場としての“市場”の価値がある。
パソコンやスマホでは味わえない、モノ、コト、コトバが動く場所、それが市場だと思う。
最近ではその市場が、定期的に開催される特定の場所や路上だけではなく、
町歩きイベントとして町に現れたり、音楽フェスの会場などに現れたりする。ふと旅先で、それらに出会えたりするのも面白い。
浜松市の中心市街地肴町で開催される「まるたま市」もその一つ。
浜松駅からも数分で歩いていけるところに、肴町はある。
名前のとおり、この辺りはかつて、魚河岸などが並び魚の商いが行われていたところである。
江戸時代から賑わいのある界隈なのである。
そこに現代の工芸アーチストなどが、空き店舗や空きスペースを活用して店を並べる。
この5月には5回目を数え、回を重ねる毎に市場は充実しているようだ。
旅人的に言えば、この市場を楽しむことだけでも十分であるが、初めて訪れる町歩きのなかで、
既存店舗や路地裏などにその町の趣を知ることに発見があるのが面白い。
カステラ饅頭屋さんに置いてあった子ども用の踏み台。カステラを作る工程を子どもも覗き込めるように置いてある。
こんな都会の中心部でそんな店主の愛情が見られるのも嬉しい。
近所の子どもたちがスタンプラリーの用紙を持って、町を行き来している。
それが、改めて子どもたちにこの町のことを知ってもらえるきっかけにもなるんだろう。
次回は今年の11月に開催されるらしい。そうして、浜松のまちなかに新たな賑わいを作り続ける。
いわゆるフェスと呼ばれる音楽系のイベントが各地で毎週のように開催されている。
最近では、単なる音楽フェスではなく、市場も充実したフェスも増えている。
静岡県富士宮市、富士山のふもとで開催された日本最大級のキャンプイベント「GO OUT ジャンボリー」でも、
キャンパー向けを中心に市場(買い物の場)も提供されていた。
そして、毎年、愛知県蒲郡市で開催されている「森、道、市場」も、その名のとおり市場も主役となっている。
イベント会場内ばかりではなく、飲食ブースは会場外の一般の人たちも楽しめるようになっている。
ここにはいわゆる祭りやイベントに常連の露店は出ていない。
全国有数の工芸家やアーチストが店を連ね、こだわりの飲食店などが集い、音楽とともに楽しむ臨時特設マーケットになっている。
正直、ライブを見てなくても、これらの店めぐりをしているだけでも十分に楽しめる。
名古屋の中心部、納屋橋でも毎月第4金曜日の夜、月に一度のナイトマーケット「なやばし夜イチ」が現れる。
いつもと違ったひと時を夜風を感じながら川べりで楽しむ。
まちなかの商店街で、フェス会場で、都市の川べりで、様々な場所で開かれる“市場”をぶらり歩く。
そこには旅的な偶然の出会いやモノやコトとの思わぬ出会いがある。
- 田中 三文 (たなか みつふみ)
愛知県豊橋市生まれ。
出版社勤務を経て、現在は三菱UFJリサーチ&コンサルティング 政策研究事業本部 上席主任研究員。
愛知大学地域政策学部非常勤講師(観光まちづくり論)
地域を盛り上げる観光事業や集客計画など、手がけてきたプロジェクトは数知れず。
2012年より2014年まで昇龍道プロジェクト推進協議会・台湾香港部会長を務め、
同エリアのインバウンド促進計画や外国人受入環境整備などにも力を注いでいる。
旅と写真とロックを愛する仕事人で、公私ともに、さすらいの旅人として各地を巡っている。
日本の真ん中に位置する中部北陸地域の形は、能登半島が龍の頭の形に、三重県が龍の尾に似ており、龍の体が隈無く中部北陸9県を昇っていく様子を思い起こされることから同地域の観光エリアを「昇龍道」と呼んでいます。
この地域には日本の魅力が凝縮されており、中部北陸9県が官民一体となって海外からの観光客誘致を促進する「昇龍道プロジェクト」も好調です。このブログでは、「昇龍道」の四季折々の姿を写真と文章で紹介していきます。
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