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コラム カメラマンが行く!プロゴルフトーナメント

中日クラウンズ

中日クラウンズ

 2010年5月2日名古屋ゴルフ倶楽部和合コース、誰が今日この日の出来事を予測し得ただろうか?まるで異次元の世界。皆さんすでにご存知のように、中日クラウンズ最終日。石川遼がまたまた快挙を成し遂げた。

3日目18番右ラフからのセカンドショット。

3日目18番右ラフからのセカンドショット。

 この日1アンダー首位と6打差18位タイでスタートした石川遼が、なんと12バーディーノーボギーの58、通算13アンダーで逆転圧勝。この日の58ストロークは世界ツアー記録、名選手でも難しいと言われる難攻不落の和合を18歳でしかも世界新記録で征服したのだ。目の前の信じられない光景に見ていて鳥肌が立つ、まるで神が憑いた様なバーディーラッシュに観客は恐怖さえ覚えたに違いない。そこだけ異次元の空間だったのだ。
同組の山下和宏やマークセンも“途中からギャラリーになり応援してました、ほんといいもの見せてもらいました”とコメント。

16番、山越えでグリーン手前のバンカーを狙いバーディー。

16番、山越えでグリーン手前のバンカーを狙いバーディー。

 この日私は石川にスタートから4番Teeまで付いていた。この時石川は2バーディーの3アンダー。まさかこの時点で快進撃を続けるとは思ってもみないので、4番のパットを待たずに、最終組のスタートを撮るため1番Teeへ。最終組の1番パットを撮影後、のんきに昼飯へ…食後、遼の9番上がりを撮ろうと9番グリーンに行くと、なんと石川遼8アンダートップ(^^);ここからベタ付きで撮影、その後も最終ホールまで快進撃を続けた。
ただ、この日強気に打ってきたパットが18番でショートしたことだけは悔しかった様だ。
といってもパーなのだが、これが入っていれば親父の採点(99点)も100点満点だったに違いない。

 石川本人も“夢の中でプレーしている様、この様な気持ちになったのは3年前のアマチュア時代の初優勝以来”とコメントしている。そう、あの日も私はその場所にいのだ“あの日”も今日と同じ異次元の空気が流れていた。私自身、歴史的な瞬間に2度も立会えたことは幸せと言うほかないだろう。

(上)マンシングKSBのカップとともに、当時ハニカミ王子といわれた。(下)中日クラウンズで優勝した石川遼。

(上)マンシングKSBのカップとともに、当時ハニカミ王子といわれた。(下)中日クラウンズで優勝した石川遼。

 今日の試合展開を見ていて3年前のマンシングウェアKSBで優勝した時のことを思い出した。当時彼は無名のアマチュア選手、マンシングKSBの予選会に出場、落選したのだが石川の通う高校(杉並学院高校)のゴルフ部監督が“面白いヤツだから”と無理を承知で推薦。予選会アマ1位の成績が評価されたこともあり、何とか主催者推薦を受けたのは大会直前。もちろんプロの試合は初出場。
そして試合1日目暴風雨で中止、2日目に行った第1ラウンドは雷、3日目の第2ラウンドでは豪雨で中断中、強豪の一角が再開の合図を待たずにプレー再会して失格、最終日2ラウンド(36ホール)やろうということに、どうもKSBの夕方のテレビ番組が、なんらかの都合で飛んでしまい時間帯が空いてしまったので、“生中継できる”ということもあり36ホール決行が決まったらしい。普通、プロとはいえ一日2ラウンドはしないからベテラン選手には辛いことだが、当時の石川の場合15歳という若さに加え、普段から自分でキャディーバッグを担いで18ホール回っているので、キャディー付の今回は体力十分だったといえよう。第3ラウンド途中から石川のバーディーラッシュが始まる。第3ラウンド終了時点では9位6アンダーまで浮上、この日2ラウンド目となる最終ラウンドでもその勢いは止まらず通算12アンダー、トップでホールアウト、後続の組を待つこと1時間弱、18番、最終組宮本勝昌がバーディーをとればプレーオフ、圧倒的経験の差から石川が負けていたかもしれない。また18ホールだった場合も石川の勝利はなかっただろう。

大勢のギャラリーを引き連れてフェアウェイを行く。

大勢のギャラリーを引き連れてフェアウェイを行く。

 異例の推薦獲得、荒れた天候、強豪の失格、テレビ番組の変更、関係者の判断、最終日36ホール、この様な偶然の連続が15歳の石川の勝利に貢献したとすれば、類まれな強運の持ち主とも言える。その偶然を味方にできるのも石川の才能なのだろう。まさに嵐の中から生まれたニューヒーロー、神がこの世に降り立った瞬間だった。
今回は前回と条件も違うとはいえ、石川もギャラリーもあの日と同じ異次元空間にいたことは間違いないだろう。石川自身も“今日のようなプレーをまたやれと言われても出来ない”とコメントしている。
和合に神が降りた日、ギャラリーもこの1日を忘れることはない。

2010年05月13日

コラムフォト

取材担当プロフィール

山之内 博章 やまのうち はくしょう (はっちゃんと呼ばれています。)
1967年2月24日名古屋市生まれO型の魚座です
ゴルフフォトグラファーをやってますが、他に人物や商品も撮ります。
特技?なんだろ?カラオケは大好き。