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コラム カメラマンが行く!プロゴルフトーナメント

東建ホームメイトカップ 2016

東建ホームメイトカップ 2016

永野竜太郎。熊本への思いを白いボールに込める。

永野竜太郎。熊本への思いを白いボールに込める。

 いよいよ本格的なゴルフシーズン到来。3月の女子に続き国内男子ツアーが開幕した。今年は日本ゴルフツアー機構の体制が替わり、青木功氏が新会長に就任。選手会長には地元名古屋に住まいを構える宮里優作が就任した。新体制で向かえる開幕戦は、地元三重県で開催される東建ホームメイトカップだ。今大会期間中、熊本で大変なことが起きた。初日を終えたその夜、熊本を震度7の地震が襲ったのだ。震源近くの菊陽町で開催されるはずだった女子ツアーのKKT杯バンテリンレディースは中止。更に翌日、同じ熊本で前日以上の大地震が発生。多くの方が避難し、家屋が倒壊した。この東建ホームメイトカップにも4人の熊本出身の選手が出場していた。中でも永野竜太郎と重永亜斗夢は、初日から二人とも首位タイと頑張っていた。その夜、「熊本で震度7の地震」のニュースが入ってきた。首位の二人にしてみれば、正に晴天の霹靂だった。翌日の地震で崩壊した地元の阿蘇大橋を見て衝撃を受けた二人だが、「自分達が頑張らないと」。不安で心ゆれる中、3日間踏ん張り、優勝こそ叶わなかったが、永野が-12で単独3位、重永が-6で4位タイと、崩れることなく今大会を終えた。自宅や家族の被災にも心折れず頑張った二人に、多くのギャラリーが温かい声援を送っていた。

永野竜太郎は後半バーディーラッシュ。6バーディー1ボギーで猛追したが、1打及ばず-12で単独3位。この状況で単独3位はリッパ。

永野竜太郎は後半バーディーラッシュ。6バーディー1ボギーで猛追したが、1打及ばず-12で単独3位。この状況で単独3位はリッパ。

 永野竜太郎の自宅は、最大震度7を記録した熊本県益城町だ。「家族は無事でした。でも普段使っているところが潰れていたり、どんどん状況が酷くなっていく」「不安でいっぱいだけど、自分のことに集中しようと…」最終日、ハーフターンで青木功さんに「熊本のために笑顔で頑張ってこい」と握手で励まされ、後半6バーディーで、首位金庚泰を孟追。1打差まで追い上げた。14年のダンロップスリクソン福島オープン2位タイに継ぐ単独3位でフィニッシュ。自身最高の賞金884万円を獲得。この原稿を書いている最中にもパナソニックオープンで永野竜太郎首位などのニュースが入ってくる。「早く自身の初優勝のニュースを地元に届けられたら」念願のツアー初優勝も近い。もしかして原稿がアップされる頃には優勝しているかも知れない。

 重永亜斗夢は熊本市北区出身。大会初日の地震で家族を心配し、嫁さんに弱音を吐いたら逆に「賞金稼いでこい」と言われ、調子悪くも崩れず踏ん張り、572万を稼いだ。
最終日は、テレビ解説で会場を訪れていた後輩の石川遼からアドバイスをもらった。「やっている本人がどこへ飛んでいくかわからない状態」というように、心身ともに疲弊していた。前半はパーセーブがやっと。後半も乱れたが、何とか踏ん張り4位タイ。「調子も悪く気持の整理も出来なかった。もう頭の中がごちゃごちゃ。熊本の人から見て、どう映ったかはわからないけどある程度頑張れたかな」。

プレーオフに敗れ金庚泰と握手する近藤共弘。庚泰の強さの秘訣に「良い勉強になりました」

プレーオフに敗れ金庚泰と握手する近藤共弘。庚泰の強さの秘訣に「良い勉強になりました」

 前出の二人を尻目に、優勝争いを演じたのが金庚泰と近藤共弘だ。この状況から予選から独走態勢の金庚泰で決まりか?と思われたが、近藤共弘が猛追。11番で遂にその背中を捕らえたが…再び離されてしまう。庚泰曰く「東建はあまり良い思い出がない」と言うように、2打差で迎えた最終18番。先にバーディーを決め、1打差に迫った近藤に対するプレッシャーか?1.5メートルのパーパットを外してまさかのボギー…。プレーオフに持ち込まれてしまった。「早く決着をつけてしまいたかった。後半体力が落ちてきて緊張していなければ歩くことも困難なほど」というように決着を急いだためか?
そしてプレーオフ。2ホールでは決着がつかず、カップを切りなおして3ホール目。2打目をミスしてグリーン右ラフに外した近藤は、2メートルのパーパットも読みきれずボギー。3打目を50センチに寄せ難なくパーパットを決めた金庚泰がツアー初戦を制した。実は金庚泰、かなり調子が悪かったという。近藤から見ても「相当調子が悪そうな感じ。今日はほとんどドライバーを打っていませんでしたね。徹底してティーショットはスプーンでした。僕なら少しでも前に行きたくて打ってしまう。そこが僕との違い。“気持ちがブレない”そこが庚泰の強さだと思った。良い勉強になりました」。やっぱり昨年の賞金王は強かった。庚泰もここ東建での“悪い思い出を”払拭出来たに違いない。

2016年05月10日

コラムフォト

取材担当プロフィール

山之内 博章 やまのうち はくしょう (はっちゃんと呼ばれています。)
1967年2月24日名古屋市生まれO型の魚座です
ゴルフフォトグラファーをやってますが、他に人物や商品も撮ります。
特技?なんだろ?カラオケは大好き。