最終18番、優勝を決めた稲森佑貴。リーダーボードをバックにガッツポーズが決まる。このシチュエーションで撮影できたのは何年ぶりか？

　第62回中日クラウンズが3年ぶりに有観客で開催され、「日本一曲げない男」稲森佑貴が和合を制し念願のレギュラーツアー“初勝利”を飾った。2018、2019年に日本オープン優勝とメジャー2勝を挙げたが、レギュラーでは未勝利。“メジャーしか勝てない男”という“ずっと気になっていた称号”を返上。

　この日9アンダー3位タイからスタートした稲森。1番2番と連続バーディーで単独首位に。3番ボギーも「しょうがないと思って気持ちを整理した」のが奏功したのか、8番から怒涛の3連続バーディーで13アンダー。12番もバーディーとし「このままパーを拾っていけばいけるかも」と優勝を意識。気持に余裕ができたためか16、17番でもバーディーを重ね、2位に3打差。通算16アンダーで念願のクラウンズ優勝を果した。

最終組の18番グリーンは水浸し。この組に優勝は懸かっていなかったものの、最終日最終組でなければ一時中断になっていたかも？

　“メジャーしか勝てない男”と言われていたが「日本オープンとかメジャーに勝つことは嬉しいですけど、今年はレギュラーでも勝ちたいと思っていた。特にクラウンズは一番勝ちたい試合。いつも“勝ちたい試合は？”と聞かれれば和合と答えているので」。
勝因は何？「最終組ではなかったので気軽だったのも事実」。雨の影響については？「雨は嫌ですが今回に限って言えば快晴より雨で良かったなと。雨のおかげで硬いグリーンが止まりやすくなりデッドに攻めやすくなったので」。雨が本降りになりだしたのは稲森組が8番に入った頃か、そこから8、9、10と3連続バーディー。稲森の正確なショットに雨が奏功したとも言える。

「和合ってこんなにも水が溜まりやすいんだ」と思う。グリーンが硬いということは水捌けも悪いということか？

　なるほど「難攻不落」といわれる和合も雨が多いと「攻めやすく」なるのだ。砲台お椀型の狭いグリーンは変わらないが、硬さ速さという面では球が「止まりやすく」なるのも事実。実際18番グリーンなどあれだけ水が浮きやすければ否が応にも止まる。ショットメーカーである稲森にしてみればピンをデッドに攻めるだけ。自信満々の正確なショットで勝利を手繰りよせた。

　この和合コースの距離は6557Yと男子トーナメントの中では最短だが、前述のようにグリーンは小さく硬く速い。おまけに「お椀型」で止まりにくく特有の風もあり難易度は至極高い。2011年には日本女子オープン（6383Y）が開催されたが、優勝した馬場ゆかりのスコアは292で12オーバー。難しいセッティングもさることながら、その難易度も話題になった。2000年代に改修され更に難易度が上がったが、近年のクラウンズで2桁勝利が続くところを見ても男子プロのパフォーマンスの「高さ」を垣間見ることのできる本大会であるのではないかとも思う。

表彰式後のフォトセッションでは奥さんの美穂さんから祝福のキスをもらった。

　稲森が最近取り組んでいるのは肉体改造だ。「若くて飛ばす選手が沢山出てきているので、負けないためにもトレーニングに取り組んでいる。今までは腹筋が大事だと思っていたが“背筋が一番大事”と言われたので背筋の強化を意識してやっている。結果、ラフからでも理想の玉が打ちやすくなった。あと食事にも気を付けるようになりました。試合から帰って休みの日などテレビやパソコンとか見ながら、ついついポテチとか食べてしまう悪い癖があるので…。食事も“ささ身や春雨”などカロリーを気にしている。今シーズンは食事との戦いでもあります」。フェアウェイキープ率6年連続1位だがドライビングディスタンスは100位とワースト。曲がらないショットに飛距離がついてくれば更に活躍が期待できるだろう。今年の目標は「賞金王」だそうだ。

執筆：2022年5月22日

2022年06月01日