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コラム 熱湯コラム「いで湯のあしあと」

湯めぐり天国 別府

湯めぐり天国 別府

 ベタな温泉地はベタな雰囲気が漂う。
 大分道から別府インターを降りると、突如として硫黄の匂いがつんと鼻につき、ああ、温泉天国に到着したんだと気分が高揚してくる。そして大袈裟かもしれないが、街全体が湯の花で埋もれている感覚に陥る。

 別府といえば、源泉数かつ湧出量では日本一を誇る有名すぎる温泉地。完全制覇したければ、別府八湯と呼ばれる8箇所の温泉郷をめぐりたいところだが、2・3日では残念ながら限りがある。今回は、宿泊した海岸沿いの宿のお風呂も含め、全部で3箇所の湯めぐりをした。

 宿泊した清海荘は、海沿いに建つ大型旅館。海から登る朝日を独り占めできる、眺望が自慢の内湯がある。最初に入ったここのお湯は、以外にもさらりとしており、市内の強い硫黄臭から想像した強いお湯というよりは、柔らかで優しく身体を包み込む、とろみのある透明の炭酸水素塩泉だった。

 別府市中心部を含みこの海岸沿いの旅館街は、かつて団体旅行で賑っていたであろう面影を残した旅館が多い。時代の流れと共に個人旅行が主流となった今では、それら大型旅館の若干鄙びた感と、昭和レトロな雰囲気を漂わす市内中心部とが妙にマッチしており、ザ・温泉地と明言できる。街中でそのレトロ感をさらに感じ、必ず押さえておきたいのが観光客に人気の竹瓦温泉だ。別府の玄関とも言われるこの温泉は市営で、普通の内湯であれば100円で入浴できる。が、ここは1000円払ってでも砂湯に入ろう。入り口でおばちゃんにお金を払い着替えを受け取って更衣室に入る。外観といいおばちゃんといい更衣室といい、年季が感じられるなんとも言えないレトロな雰囲気の中でわくわくしながら浴室の扉を開けると、スコップを持った体育会系のお姉さんが仰向けになるように促す。そこで首から下を砂埋めにされるのだ。思ったほど熱すぎず、ちょうどよい温かさの砂が全身の血流を促進させる。気持ちよくなってうとうとしかけた15分ほどで起き上がり、シャワーと湯船で砂を落としフィニッシュ。

 ほどよい汗をかき、街中のレトロな餃子屋「湖月」と、40年以上やっているという年季の入った中華屋「一二三(ひふみ)」で、遅めの夕食をとる為はしごした。こういう薄汚いけれども流行っている店は味のみで勝負、思った通り毎日通いたくなる味だ。竹瓦温泉とこの2軒のはしごで、昭和へのタイムスリップを味わえる。78歳の元気な一二三のオーナーは、毎日のように市営のお風呂へ100円で入りに行くといっていた。市内で100箇所以上もある市営浴場は、なるほど、うらやましいくらいに住民の生活に密着しているのである。

 さて翌日、もっと硫黄色の濃い温泉にどうしてもつかりたいとチョイスした最後の場所が明礬(みょうばん)温泉だ。市街から少し離れて、山間の道を登って行くと、もうもうとした湯煙と硫黄の匂いが立ち込める温泉街に到着。湯煙で蒸したプリンを味わった後、日帰り入浴のやっている「山の湯」で湯をいただいた。匂いとは裏腹に、意外にもここのお湯も無色透明であったが、かなり硫黄質の濃いお湯で、湯上り後も自分の身体から硫黄臭がほんのりただよっていた。湯上り処で硫黄泉で蒸した卵をいただいて、慌しく帰路についた。

 今回3箇所湯めぐりしたといっても、まだ別府の十分の一も堪能していない。地獄谷で有名な鉄輪温泉も、世界最大の泥湯も入ってみたかったけど、次回のお楽しみにとっておくこととしよう。レトロで古臭い雰囲気をいい意味で残した別府市は、まさに湯めぐり天国のエンターテインメントパークのようであった。

【天空湯房 清海荘】
住所: 別府市北浜3-13-3
アクセス
 公共交通機関: 別府駅より海岸方面へ徒歩15分
泉温(源泉): 52.3度(PH値:8.2)
泉質名: 炭酸水素塩泉
色・味・匂: 無色透明・弱硫黄臭
料金: 立ち寄り500円、一泊二食

【竹瓦温泉】
住所: 別府市元町16-23
アクセス
 公共交通機関: 別府駅より徒歩10分
泉温(源泉): 42~57.7度(PH値:6.7~7.3)
泉質名: 炭酸水素塩泉
色・味・匂: 無色透明・弱硫黄臭
料金: 一般入浴100円、砂湯1030円
営業時間: 一般入浴 6:30~22:30、砂湯 8:00~21:30

【明礬温泉 山の湯】
住所: 別府市明礬1組
泉温(源泉): 61.3度(PH値:1.9)
泉質名: 酸性泉
色・味・匂: 弱乳白色、塩味、微弱硫化水素臭
料金: 500円
営業時間: 9:30~21:00

2014年06月06日

コラムフォト

取材担当プロフィール

みなもといずみ
近場から遠出まで、行く先々に温泉マークを見つければすぐに飛び込んでしまうほどの温泉女。出張先ですら、温泉があればタオルとパンツを持ってでかけます。女である以上、温泉に癒される人生は永遠です。行き当たりばったりの旅が大好きな私のあこがれは、スナフキン。点々と旅を続けながらいで湯を求め、足あとを残していきたい!