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コラム 熱湯コラム「いで湯のあしあと」

多成分を誇る日本最古の名泉 有馬温泉

多成分を誇る日本最古の名泉 有馬温泉

 京都からこんなに近いと思わなかった。
 名神から中国自動車道に乗り、西宮北インターからほんの10分で、日本三大古泉・三大名泉でよく耳にする有馬温泉に到着する。関西の奥座敷と呼ばれたこの地には、金泉・銀泉と呼ばれる2種類の源泉が湧くとしても有名である。

 日本最古の温泉地として、有馬の温泉街は昔からの情緒を残していた。
 六甲山近くの山峡にあるため、こじんまりとした温泉街はこ狭い路地と急な坂道でできている。その両側には様々な店舗が並び、時代を思わせる佇まいの中で、伝統的な製法で煎餅を焼いていたり、温泉饅頭を蒸していたりする。出来立ての煎餅が焼きあがる香ばしい香りや温泉饅頭の湯気が、路上にあふれる観光客を魅了している。浴衣と下駄で闊歩したくなる温泉街である。

 有馬には800年ほど前に、「~坊」と呼ばれる湯治宿が12軒あった。伝統的な旅館には、その当時の名を残すところも多い。今回我々が宿泊したのは、竹取亭円山(まるやま)。「~坊」ではないが、30軒ほど軒を連ねる旅館の中で、最も高台に位置する旅館である。

 ロビーに入ると、温泉饅頭とおしぼりでもてなされ、好きな浴衣と帯を選ばせてもらえる。和巾着のプレゼントなど、女性にはウレシイ細やかなサービスである。また、希望であれば、ロビーからエレベーターまで(10mくらい)、御所車に乗って引っ張ってもらえたりもする。まさにかぐや姫の気分である。

 旅館の名から想像できる通り、ここの大浴場は、裏山の美しい竹林を眺めながら入浴できる。金泉・銀泉ともに湧いており、鉄分を多く含む赤褐色の金泉は、身体の芯まで温まる。その色の濃さに、子供などは最初お湯につかるのに、かなりためらいを感じているが、一旦入ってしまうと、そのしょっぱさに「お味噌汁みたーい」なんてはしゃいだりしている。露天にある銀泉はラジウム泉。他の施設では、炭酸泉の場合もあり、とにかく多種類の成分が含まれ、その効能も期待できそうである。

 そして、ここの食事は文句なしに美味しい。ただの和懐石ではなく、洗練された和洋懐石である。苦手なもの、子供メニューにもフレキシブルに対応してくれる。先附からデザートまで、五感で目いっぱい楽しむことができた。

 翌朝は10年以上毎日続いているという恒例の餅つきと朝食を楽しんだあと、せっかくなので六甲山ロープウェーを登る。快晴のため、山頂からの眺めは素晴らしい。神戸の美しい街並みを障害物なくはるか遠くまで鳥瞰できた。

 いつも京都まで足を伸ばしては、なかなかいい温泉地がないと思いこんでいた私。近所の銭湯も手軽でいいけど、日帰り距離でこんな名泉があるなら、毎回でも行けちゃいそうである。紅葉谷にある有馬温泉、きっとこれから美しさのピークを極めるに違いない。

【有馬温泉 竹取亭円山】
住所: 兵庫県神戸市北区有馬町1364-1
電話: 078-904-0631
アクセス
 車の場合: 名神高速(吹田JCT) → 中国自動車道 → 西宮北IC下車 → 有馬温泉(約10分)
 公共交通機関: 名古屋駅(JR新幹線) → 新神戸駅(地下鉄) → 神戸電鉄谷上乗り換え → 神戸電鉄有馬口乗換え → 有馬温泉(新神戸より約30分)

『金泉』
泉質名: 含鉄ナトリウム塩化物強塩高温泉
色・味・匂: 赤褐色、塩味
効能(入浴): 炎症性および非炎症性のリウマチ疾患、外傷、手術後のリハビリテーション、慢性附属器炎、機能性不妊症、自律神経系障害、乾癬(かんせん)

『銀泉』
泉質名: 放射能泉(ラドン泉)
色・味・匂: 無色透明、無味無臭
効能(入浴): 硬直性脊椎症、関節の退行性症状、慢性多発性関節症、脊椎の退行性疾患、慢性痛風、関節、筋肉リウマチ、軽度の末梢性動脈血行障害、更年期障害、気管支性ぜんそく
料金: ¥20,000~30,000(大人1泊2食付)

2011年12月02日

コラムフォト

取材担当プロフィール

みなもといずみ
近場から遠出まで、行く先々に温泉マークを見つければすぐに飛び込んでしまうほどの温泉女。出張先ですら、温泉があればタオルとパンツを持ってでかけます。女である以上、温泉に癒される人生は永遠です。行き当たりばったりの旅が大好きな私のあこがれは、スナフキン。点々と旅を続けながらいで湯を求め、足あとを残していきたい!