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コラム 熱湯コラム「いで湯のあしあと」

阿蘇五山の鼓動 地獄温泉

阿蘇五山の鼓動 地獄温泉

 国内で温泉地最多は大分県らしいが、熊本県も負けていないはずだ。10年ぶりの熊本旅行は、どの温泉地に行こうか3日間迷った。ある温泉評論家が雑誌で、全国の絶景露天風呂トップ10を挙げていたが、地獄温泉は「温泉そのものが絶景」だと言っていた。その言葉が妙に気になって、数ある魅力的な県内の温泉地から、そこを選んだのだった。

 熊本空港からレンタカーで約40分。道中、様々な温泉地の看板を目にしながら山道を走り、秘湯の宿 清風荘に到着。阿蘇五山烏帽子岳の中腹にある地獄温泉は、この宿のためだけにある。車から降りたとたん、硫黄の匂いがつんと鼻をつく。この匂いは、チェックインをして部屋に通されたときにさらに強くなった。さすが湯治場として200年以上の歴史を持つだけに、源泉の匂いや成分が、ここにある全てのものに染み付いているのだ。

 内湯・外湯を含み、5カ所の温泉があるが、ここの目玉は何と言っても「すずめの湯」。夜の1時間以外は、混浴である。脱衣所を出てこの露天風呂を眺めるとなるほど、絶景と評された意味がよくわかる。大きな梁のような年季の入った木材で6カ所に仕切られた浴槽に、白濁した硫黄泉が湧いているのを見ると、「阿蘇の温泉とは」を一枚の絵で見ているようだ。

 このすずめの湯は、入っている浴場の真下から直接源泉が湧き出す究極の源泉掛け流し、いや源泉湧き出しなのだ。白濁した湯面にぷくぷくと湧き出る音が雀の鳴き声に似ているから、すずめの湯というらしい。かなり熱いお湯に身を滑らすと、阿蘇山の鼓動がまんま感じられるようだ。濃い硫黄臭に浸かっていると、身体全体に温泉成分が染み込むような気がする。毎日のように通う湯治客もいるというのもうなずける。

 夕食は、古民家風「曲水庵」にて、猪鍋、鹿と鴨の炭火焼き肉の地獄鍋コースをいただく。阿蘇五岳に見立てた鉄板で焼き肉をしながら、鉄板の中心で猪鍋を炊くという贅沢ジビエ三昧コース。焼き肉を楽しんでいると、鍋の食材がどんぶらこ・・・と食卓脇の水路上を流れてくるエンターテイメントも楽しい限り。阿蘇の地酒や焼酎をたしなみつつ、大満足の時間はあっという間に過ぎていく。

 翌朝、新鮮な朝食をいただいた後も、元湯や新湯などの源泉を思う存分楽しみ、名残惜しい気持ちでチェックアウトをした。チェックアウトと入れ替えに、日帰りの観光客や常連の湯治客がぞくぞくと、すずめの湯を目指してやって来ていた。200年以上も愛され続ける地獄温泉。まるでスープだけで勝負できるどこかのラーメン屋のように、まさにこの温泉だけでも勝負できる、南阿蘇の秘湯である。

【地獄温泉 清風荘】
住所: 熊本県阿蘇郡南阿蘇村河陽2327
電話: 0967-67-0005
アクセス
 熊本空港より車で約40分、熊本インターより約45分、熊本市内より約1時間
泉温(源泉): 66.8度(PH値:2.5)
泉質名: 単純硫黄温泉
色・味・匂: 硫黄臭・酸味
効能: 神経痛、筋肉痛、関節痛四十肩・五十肩、腰痛、運動麻痺、関節のこわばり、打ち身(打撲)、くじき(捻挫)、痔、冷え症、疲労回復(ストレス解消)、病後回復、健康増進(健康づくり)、慢性皮膚病、慢性婦人病、月経障害、慢性消化器病、慢性便秘、動脈硬化症、高血圧症、肥満、糖尿病(高血糖)、痛風(高尿酸)
料金: 11,820円~(一泊二食)

2015年01月06日

コラムフォト

取材担当プロフィール

みなもといずみ
近場から遠出まで、行く先々に温泉マークを見つければすぐに飛び込んでしまうほどの温泉女。出張先ですら、温泉があればタオルとパンツを持ってでかけます。女である以上、温泉に癒される人生は永遠です。行き当たりばったりの旅が大好きな私のあこがれは、スナフキン。点々と旅を続けながらいで湯を求め、足あとを残していきたい!