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コラム 熱湯コラム「いで湯のあしあと」

京の奥座敷 くらま温泉

京の奥座敷 くらま温泉

 キンモクセイの香りを強く感じるようになってくると、数ヶ月前のうだるような暑さが嘘だったように、急に秋の気配を感じるようになる。最近めっきりご無沙汰していた温かい温泉が恋しくなる季節の到来だ。

 京都市内より小一時間。源義経が鞍馬天狗に修行を受けたという縁の山、また近年のパワースポットブームで貴船神社と並んで有名な、鞍馬山まで車を走らせる。京の奥座敷とも呼ばれる山里は、最近急激に寒くなったせいか、少しずつもみじの葉もきれいに色づき始めていた。

 まずはパワースポットである鞍馬寺を散策。香港のヴィクトリアピークを彷彿させる急斜面を登るケーブルカーに乗り込み、中腹で降車。マイナスイオンを勢いよく吸い込み、たまにぜいぜいと息をつきつつ山頂に続く無数の階段を上る。本堂でお参りをすませた後、山頂からの京都市街を眺めながら、さっき買ってきた京のおばんざい弁当を広げて食べた。なかなかのピクニック日和である。

 鞍馬山を旧街道まで下り、街道沿いを少しドライブしたその先には、くらま温泉 峰麓湯が待っている。
 宿泊施設も併設するくらま温泉は、寺参りに来る観光客が立ち寄るには絶好の日帰り温泉施設である。秘湯の趣を持つ峰麓湯であるが、週末で観光客もピークに達するシーズンのため、結構混んでいた。日本人客に混じり、外国人観光客もいる。こんな山中まで来るとはマニアな外国人だなぁと思いながら、お金を払って脱衣所へ向かう。

 脱衣所を出るとすぐ目の前に大きな露天風呂が広がり、さくらやもみじの木々に囲まれまさに山中の秘湯。くらまの山中より湧出するお湯は硫黄泉であるが、ほとんど無味無臭で、思ったよりさらりとしていた。少し肌寒い山中で入るのにちょうどよい温度に加温されており、熱すぎずぬるすぎず、思わずため息をもらす。ときどき小鳥の囀りとキンモクセイの香りをふっと感じる以外はとても静かで、久々の森林浴に思いを馳せた。

 ぼーっと無心になってゆったりと30分ほど浸かってから外に出た。ひんやりとした外気がとっても心地よい。
 久々の硫黄泉に充分浸かり、温泉の効能をしみじみと体感した。ついこの間まで暑かったのに急激に冷え込んできてどう対処したらよいかわからないと、秋の到来に戸惑いを感じていた私も、その夜は床についてからも身体がぽかぽかしていたのは言うまでもない。

 義経も修行の合間にこのお湯に浸かり、修行の身を癒したのだろうか。
 京都の秋もあと2週間ほどで紅葉のピークを迎える。観光客でごった返す市街の観光地めぐりもいいけど、紅葉した山々を眺めながらこんな秘湯につかるのも、京都の別の顔を楽しむにはいいのではないだろうか。

【くらま温泉 峰麓湯(ほうろくゆ)】
住所: 京都市左京区鞍馬本町520
電話: 075-741-2131
アクセス
 車の場合: 名古屋 → 名神高速(京都東IC下車) → 京都市内より鞍馬街道方面へ約1時間
 公共交通機関: 名古屋駅(新幹線35分) → 京都駅 → 四条より京阪「祇園四条」駅 → 「出町柳」駅下車 → (比叡電車) → 「鞍馬」駅下車(約30分) 鞍馬駅より無料送迎バスあり
泉温(源泉): 15.9度
泉質名: 単純硫黄冷鉱泉
色・味・匂: 無色透明・無味・硫化水素臭
効能(入浴): 神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、慢性皮膚病、虚弱自動、病後復期、疲労回復、健康増進、動脈硬化症
料金: ¥1,000(大人) ¥700(小人)

2012年11月08日

コラムフォト

取材担当プロフィール

みなもといずみ
近場から遠出まで、行く先々に温泉マークを見つければすぐに飛び込んでしまうほどの温泉女。出張先ですら、温泉があればタオルとパンツを持ってでかけます。女である以上、温泉に癒される人生は永遠です。行き当たりばったりの旅が大好きな私のあこがれは、スナフキン。点々と旅を続けながらいで湯を求め、足あとを残していきたい!