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コラム 熱湯コラム「いで湯のあしあと」

信州・乗鞍高原温泉

信州・乗鞍高原温泉

 猛暑は続くよ、どこまでも・・・。
 先月新穂高へ行ったばかりなのに、38℃前後の真夏日がこうも続くと、またあの高原のひんやりと澄み切った空気がムショーに恋しくなる。世の中は景気がちょっとだけ持ち直して、今年の夏休みは海外旅行へ出かける人々が増えたというのに、やはり私は安・近・短の高原の温泉地を選んだのだった。

 言うまでもなく、長野県は高品質な温泉の宝庫だ。
 その数は200近くもあると言われ、北海道に次ぎ全国第2位にランクインする。信州へ何度も足を運ぶたびに、それを改めて実感する。

 今回選んだ避暑地は、乗鞍高原。松本インターを降り、国道を進んでいくたびに、気温が下がっていくのを体感できる。ここへたどりつくまでに、幾数もの温泉地名を目にする。白骨温泉、さわんど温泉、すずらん温泉・・・・・・・。山を越え谷を越え、渓流に沿って走り橋をいくつも渡ると、やがて国道の両脇にいくつかのペンションや民宿が点在し、満開のそばの花が広がる。そうして『高原の宿 みはらし』に到着した。

 合掌造りの立派な建物である。ここのオーナーは、古民家をそのまま移築して、蕎麦屋と共に旅館を経営している。様々な民芸品で装飾されたインテリアのロビーを通り、客間へ。あんなにギリギリで予約したのに、ラッキーにも13.5畳もある広々とした「けやきの間」に通された。太くてりっぱなけやきの梁、漆喰の壁、そして夜空を眺められる天窓。夜中に異常に大きな蛾がどこからともなく入ってくるのを除けば、すばらしく趣のある部屋である。

 内湯は男女1か所ずつ、外湯は貸し切り形式で2か所。
 チェックインと同時に貸し切り風呂の時間はオーナーの判断によりアサインされるので、まずは内湯へ。ここも濁り湯だ。硫黄の匂いがぷんぷんする。年季の入った檜の湯船やちょっとレトロな洗い場が湯気で霞んで、さらに趣を増している。同じ濁り湯でも、近隣にある白骨温泉とも、GWに行った万座温泉とも、全く違った湯質である。とろんとして、湯上りは硫黄の匂いとともに、潤いが肌に残るのだ。

 そして、だれもが驚くここの夕食。
 超ぶ厚い信州牛のステーキがどどーん!と出てくる。もちろんセルフBBQ形式なので、焼き立てあつあつの柔らかいステーキを、自家製山ぶどう酒を片手に、荒塩やオリジナルソース、わさび醤油なんかで堪能できちゃうのだ。それだけではない。前菜から馬刺し、天ぷら、蕎麦・・・・・・『信州まるごとバイキング祭り』みたいに、これでもかというほどの品数とボリュームに圧倒される。

 指定時間になり、貸し切りの外湯に行った。「渓流野天風呂」である。
 渓流沿いにある「りすの湯」は、囲いもなく渓流沿いにひっそりと佇んでいる。「かえでの湯」は、囲いの周りに生える木々の間から、木漏れ日が眩しい。いずれも山間の野天風呂の雰囲気を最大限に醸し出している。

 ひんやりとした空気の中で白濁した湯船につかり、渓流の流れと鳥のさえずりに耳を澄ます。大きく深呼吸をし、目を閉じる。遠く海外まで行かなくとも、何よりも贅沢な時間が、ここにはあるのだ。

 どちらも一応貸し切りだから、誰かに見られることはないかもしれないが、こういう見えそうで見えない野天風呂では、素っ裸になって湯船の縁で仁王立ちをすると何とも言えない解放感である。どうせ誰も見てないんだから、やったことない人は、是非そういうシチュエーションになったらやってみるといい。魂ごと解放された気分になるから、個人的にはおススメである。

 帰路は中央道を通らず、上高地方面へ進み、安房トンネルを抜け、奥飛騨回りで帰った。
 入道雲がもくもくと浮かぶ空は、どこまでも高い。
 きっと、ここの山々も、知らぬ間に美しい紅葉に染まるのであろう。
 猛暑日は続いても、確実に季節は流れているのだ。

【乗鞍温泉郷 高原の宿 みはらし】
住所: 長野県松本市安曇4025-2
電話: 0263-93-2612
アクセス
 車の場合: 小牧JCT(中央道) → 岡谷JCT(長野自動車道) → 松本IC → 国道158号線を上高地方面へ 又は 高山から安房トンネルを抜け上高地方面 → 国道158号線
温泉名: 乗鞍高原温泉
泉温(源泉): 49.5度
泉質名: 酸性硫化水素泉
色・味・匂: 乳白色・硫黄臭
効能: リウマチ、切り傷、婦人病、心臓病、通風、冷え性、肩こり、動脈硬化、高血圧、慢性中毒症、月経異常
料金: ¥10,500~¥12,600(一泊二食付)
公式HP: http://www.go.tvm.ne.jp/~miharasi/index.html

2010年09月01日

コラムフォト

取材担当プロフィール

みなもといずみ
近場から遠出まで、行く先々に温泉マークを見つければすぐに飛び込んでしまうほどの温泉女。出張先ですら、温泉があればタオルとパンツを持ってでかけます。女である以上、温泉に癒される人生は永遠です。行き当たりばったりの旅が大好きな私のあこがれは、スナフキン。点々と旅を続けながらいで湯を求め、足あとを残していきたい!