【本文】

  1. トップ
  2. コラム
  3. 熱湯コラム「いで湯のあしあと」
  4. 山陰の隠れた湯治場 湯村温泉

コラム 熱湯コラム「いで湯のあしあと」

山陰の隠れた湯治場 湯村温泉

山陰の隠れた湯治場 湯村温泉

 ベタだけど、今話題のGo Toトラベルキャンペーンで女子旅に出た。どこかゆっくりできる鄙びたいい感じの山間の温泉地はないかと探し、目的地を湯村温泉に決めた。正直その存在は知らなかったが、兵庫県民からするとまあまあ有名らしい。それもそのはず、湯村温泉の歴史は古く、始まりは今から1150年前、平安時代に遡る。慈覚大師が840年代に見つけた古湯とのことで、98℃の高温泉が地下ほんの数メートルから湧出する名湯なのである。

 そんな前情報から想像する通り、大阪市内から2時間半ほどかけて到着した兵庫県の最北端の山間の温泉街は、高温からわき上がる湯煙が小さな街をそのままもくもくと包み込むような、理想の温泉町だった。「湯村」という字がそのまましっくりとくる情景である。

 未開の温泉地に到着したわくわく館を押さえきれないまま、今回の女子旅ステージである宿「ゆあむ」にチェックインした。お風呂に入るにはまだ時間が早かったので、とりあえず湯けむりの街に繰り出す。徒歩で少し歩くと、温泉街の中心部「荒湯」の源泉が湧き出る場所へ向かった。源泉からはすごい煙と温度を感じ、川沿いは足湯ができるように綺麗に整備されている。近くの土産物屋で販売している生卵を買い源泉に12分つけると、ちょうどいい半熟具合の温泉ゆで卵が出来上がる。缶ビールを買って足湯につかりながらできたてほやほやのゆで卵を頬張れば、最高に至福の時が訪れるのは言うまでもない。生卵の他にも、さつまいも、じゃがいも、トウモロコシ、練乳(高温泉にダイブさせるとキャラメルになるらしい)等々様々な食材が販売されており、時間さえ許せば足湯居酒屋になってしまいそうな楽しげな雰囲気である。

 ほろ酔いのまま宿に戻り、夕食の時間まで、今度は全身温泉に浸かりにいく。なめらかで透明な美人の湯としても名高い高温泉が、少し冷えた身体に染み込む。加水はしてあるが高温泉のため、湯上がり後もずっと全身を保温してくれるようである。露天風呂はほぼ貸し切り状態で、熱めのお湯だが半身浴で冷風に当たりながら入っているとずっと入っていられそうなくらい気持ちがいい。とぽとぽと永遠に湧出される源泉の音がまた耳に心地良い。湯につかりながら、一緒に入った友人と、副業するなら何をするかという夢を語らい、他愛もオチもない会話で、日が暮れていく。

 夕食は季節の旬菜をふんだんに使い、食べきれないボリュームだった。八寸、お造り、海鮮蒸し焼き。まだシーズン若干早めかと思ったが、香住蟹の甲羅焼きまで出た。蟹味噌をぐつぐつと煮て蟹身と合わせて食べる。日本酒が進む。次々と目にもお腹にも美しく美味しいメニューの数々がでてきて、やがてクライマックスは但馬牛の鉄板焼き。艶めく赤身はやわらかく、何をつけても美味しい。昼ごはん抜いて良かった・・・。

 翌朝、またもや豪華な朝食が目の前に並ぶ。あんなに夕食食べたのに色とりどりの野菜の蒸し物を見ると旬の味覚に箸がのびる。新米に地元でとれた農家の生卵で卵かけ御飯。ええい、明日からまた粗食生活に戻ればいいさ、といいながら二敗目の白飯をおかわりをする。

 朝風呂も満喫し、チェックアウトしてから再度温泉街を散策した。腹ごなしに散歩していくと、小高い丘を登る階段を見つける。ぜいぜいいいながら、吸い寄せられるようにその急勾配の階段を登っていくと、そこには温泉街とはるか鳥取まで見渡せる小さな公園と、「夢」があった。

【湯村温泉 湧泉の宿 ゆあむ】
住所: 兵庫県美方郡新温泉町湯1610
電話: 0796-92-1101
URL: https://www.yukemuri.co.jp
アクセス: 大阪・京都方面より中国道-吉川JCT-舞鶴若狭道-北近畿豊岡道-八鹿氷ノ山IC下車-9号線約45分

源泉名: 荒湯
泉質: ナトリウム-炭酸水素塩、塩化物、硫黄塩泉
温度・PH値: 98℃、7.29
色・味・匂い: 無色透明・無味
効能: 神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・疾病・冷え性・病後回復期・疲労回復・健康増進・きりきず・やけど・慢性皮膚病・虚弱体質・慢性婦人病・動脈硬化症

2020年12月13日

コラムフォト

取材担当プロフィール

みなもといずみ
近場から遠出まで、行く先々に温泉マークを見つければすぐに飛び込んでしまうほどの温泉女。出張先ですら、温泉があればタオルとパンツを持ってでかけます。女である以上、温泉に癒される人生は永遠です。行き当たりばったりの旅が大好きな私のあこがれは、スナフキン。点々と旅を続けながらいで湯を求め、足あとを残していきたい!
旅コラム
国内
海外