
昨年行った久々の北海道温泉紀行の中に奥尻島を含めたのは、軽い気持ちであった。北海道の離島は特にウニが美味だよ、という札幌の友人による助言のもと企画したのだ。函館から江差のフェリーターミナルまでバスで2時間。真っ青な空とコバルトブルーの日本海を背景に、5月初旬のまだ冷たい風を肌に感じながらフェリーで移動し、やっとこさ到着した奥尻島のフェリーターミナルでは、何ともかわいらしい20人程の園児たちと、島のゆるキャラ、うにまる君が、我々旅行者をとても温かく出迎えてくれたのだった。
島内でレンタカーをしてまずは腹ごしらえ。腹ペコだったから目についた食堂に入った。ウニ丼2000円とめっちゃ迷ったが、ウニは民宿できっとたっぷり出てくるだろうと思って敢えてウニラーメンを注文。アサリなどの魚介出汁とあっさり塩味に、煮込んだウニが入って磯の香がたまらなく美味であった。昼食後、レンタカーで島内を走り回る。快晴の中、海岸沿いを走り島を半周し、途中で釣鐘岩で写真をとったりワイナリーに寄ったりした。そして最終目的地、奥尻島唯一の源泉に入れるホテル、湯ノ浜温泉ホテル緑館に立ち寄る。

立ち寄り温泉は貸し切りだった。内湯は広く大きな岩で作られ、先ほど観た釣鐘岩を彷彿させた。素晴らしく快晴だったため、すぐに露天風呂に飛び出す。外の光で見るとよくわかるのだが、温泉は茶褐色で、塩味と鉄分の味が濃い。源泉かけ流しの湯がこんこんと湧き続けているしるしに、岩肌に茶褐色の湯の花がこびりついている。その茶色い岩の中で湯に身を沈めると、すごーく濃厚なミネラルを全身にまとっているような気分になる。それくらい温泉の成分が濃いのがわかる。さすが源泉だ。それもそのはず、温泉にはカリウム、マグネシウム、カルシウムなどのミネラル成分を豊富に含むナトリウム・カルシウム泉で、単純泉の24倍以上の成分だそうな。外を見るとオーシャンビューで、傾きかけた陽の光が海面にきらきらと輝き、海の中の輝く宝石を眺めているようであった。潮風を浴びながらの入浴、絶景である!

さて、しっかりと長湯をし、今夜泊まる御宿「きくち」へチェックイン。先ほど寄ったワイナリーのロゼワインを部屋でたしなみつつ、夕食の時間を待つ。待ちに待った夕食では、奥尻島でとれた海の幸がテーブルいっぱいに並べられていた。メインディッシュはアワビの鉄板焼きとウニ鍋である。ウニ鍋というか、ウニを煮るなんて初めてだったが、鍋を覆いつくすようにたっぷりとウニが贅沢に入っており、濃厚な味わい。しいて言えばこの半分は生ウニ丼にして食べたい・・・と思いはしたが、朝食できっと生ウニがでるから、と期待しつつ夕食を終える。しかし翌朝ついぞ生ウニが出てくることはなかった。後で聞いたら、ウニの季節は6月からで、シーズンじゃない時期はウニ鍋が主流とのことだ。なんだ、だったら昨日の食堂でランチしたとき生ウニ丼食べとくんだったよ!!まあ、ウニ鍋もおいしかったからいいんだけど・・・。

気を取り直して、翌朝近くの海岸で波と戯れたりワカメ捕獲を楽しんだ後、離島から北の大地行きフェリーに乗り込み、札幌へのバスで帰路についた。北の小さな離島にある源泉は、スケールの大きな絶景と共に旅人の疲れを癒してくれた。フェリー乗り場で見送ってくれた園児とうにまる君に、またこの源泉と今度は絶対に生ウニを味わいに来るよ、と心に誓いながら、島をあとにした。
どこにいても震災の可能性がある日本列島であるが、だからこそ温泉天国で、だからこそこの素晴らしい温泉資源が保持されているのだろう。自然との共存は厳しくて美しい。
この度の北海道での地震では、被災された方々ができる限り早く立ち直り、早期復興されることをを心から願います。
【湯ノ浜温泉ホテル緑館】
住所: 北海道奥尻町湯浜300
アクセス: 函館市内からバスで江差フェリーターミナルー奥尻港フェリーターミナルー車で約40分(バス50分)または奥尻空港より車で20分
源泉名: 1号井と2号井の混合泉
泉質: ナトリウム・カルシウム─塩化物温泉
温度・PH値: 63.0℃, 6.58
色・味・匂: 茶褐色、弱苦み・塩味、無臭
効能: 神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔病・冷え性・病後回復期・疲労回復・健康増進・慢性皮膚病・きりきず・やけど・慢性皮膚病・慢性婦人病
2018年10月05日