東海道・池鯉鮒(ちりゅう)宿と鳴海宿の間にある有松は、江戸時代より有松絞りで栄えた町。街道沿いは昔ながらの風情ある景観を残し、絞りを扱うお店や工場が軒を連ねています。今回お話をうかがった伊藤木綿さんと、同級生の村口 実梨さんのお店「まり木綿」もその中の一つ。扉を開けるとそこにはカラフルでポップな作品の数々が並べられていました。
有松絞りの技が生きる品々 独特の色合いや足袋が人気

一つとして同じものがない絞りがずらり。履いてそのまま外出できる地下足袋も人気
有松絞りというと高価なイメージがあるかもしれませんが、昔から日用品として使われてきたものなんです。「まり木綿」でも気軽に楽しんでいただける、生活に寄り添ったものづくりを続けています。
有松絞りの様々な技法には驚かされることが多いですね。私たちは布の両側を板で挟み、染料に浸して模様をつくる「板締め絞り」という技法を使っています。この時、生地が染まらないよう防染することを「絞り」といい、白く残った部分も模様になるんですよ。同じ技法を使っても、10人いれば全員違うものが出来上がる。そこが絞りの面白さであり、人を引き付ける魅力なのだと感じています。
古くから藍色や臙脂(えんじ)などの色が多いのですが、藍色一色ではなくいろいろな色で染めてみたいと考えたことがきっかけとなり、大学の同級生・村口実梨と2人で2011年にお店をオープンしました。最近では地元からお店に通ってくださる方も増え、名古屋土産にと買っていただくことも多くなり嬉しく思います。
色鮮やかな手ぬぐいが飾られた店内。板締め絞り(右)を用いた技法だけで、これだけの模様が染色できる
江戸の情緒と賑やかな祭り 癒される有松の人と町並み

有松の町並み
有松は落ち着いた町。のんびり流れる時間に私も癒やされています。街道沿いは町並み保存地区に指定されていて、歴史的建造物も多いので宿場町の雰囲気を楽しみながら散策を楽しむことができます。三輛の山車が街道を練り歩く秋のお祭りや、毎年6月に開催される「有松絞りまつり」も大変賑わい面白いですよ。
私たちも4月9日に街道沿いのゲストハウスmadoさんで行われる「madoマルシェ」や、4月13日からジェイアール名古屋タカシマヤで行われる「わざもん衆」という催事に出展します。お近くにお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。
今後も多くの人に有松絞りの魅力を伝えられるよう、体験教室やワークショップなども行いたいと考えています。そして、私たち自身も新しい挑戦を続けながら、新しい柄との出会いを楽しみたいです。


- 幅35センチ、長さ約90センチの手ぬぐい。素材は伊勢木綿100%。とても柔らかい肌障りでシワになりにくいのが特徴。洗えば洗うほど風合いが増す。
- 手ぬぐい …1,404円(税込)
2016年04月