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北京 “後味”も最高の食堂

2008年09月18日

 店は北京独特の裏路地「胡同(フートン)」にたたずんでいた。1979年に開業した「悦賓飯店」。社会主義国の中国が個人経営を初めて認めた店で知られる。

 看板にこそ「中国最初の個人経営飲食店」とあるものの、店自体はレストランよりも食堂に近い雰囲気。入ろうとすると、表に立っていた老人に声をかけられた。「こっちは客でいっぱいだよ」。彼の案内でやや離れた別棟へ。後で分かったが店の創業者だった。

 メニューは「魚香肉絲(細切り肉のからしいため)」はじめ家庭料理が中心で値段も手ごろ。それがかえって新鮮でおいしい。五輪を機に北京は再開発が進み、こうした食堂は次々と姿を消したからだ。

 店を出ると先の創業者とばったり。「スープは全部飲んだか」とたずねる彼に「多すぎて残したよ。でもまた来るよ」と笑顔で返した。10数年前の留学時代に戻ったような気分で“後味”も最高だった。

 (新貝憲弘)