2008年12月24日
カイロからスーダンの首都ハルツームに向かう夜行便の隣の席で、スーダン人のおじさんが危篤に陥った。
六十歳ぐらいでやせ細り、車いすで搭乗した人。離陸後、首をガクッと垂れて動かなくなった。同行の娘さんが慌てて客室乗務員を呼んで酸素吸入器をあてたり、乗客の中にいた医師が心臓マッサージをしたり。容体が落ち着いた後も意識ははっきりせず、座席でぐったりし続けた。
やがて、おじさんの体がこちらに寄り掛かり、筆者の右腕に触れた。「ああ、温かい」。そう安堵(あんど)しながら「早く着いてくれ」と念じるうち、眼下にハルツームの明かりが見えてきた。
カイロの病院には、スーダンなど医療水準の低い近隣国からの入院患者も多いという。あるいはおじさんもその一人で、運命を悟って最後の力を振り絞り、故郷を目指したのかもしれない。アラーは無事にわが家まで、導いてくれたであろうか。
(内田康)