2009年06月03日
いつもはテレビドラマに夢中のソウルの友人が、珍しく「うわさを聞いて見たドキュメンタリー映画がよかった」と声を弾ませる。
その映画「ウォナン・ソリ(牛の鈴の音)」は、農作業で30年連れ添った牛の余命が「1年持たない」と知らされた老人(80)と老牛の、ともに寡黙だがどこか心が通う最後の日々の記録だ。
慶尚北道の山あいで、2004年から3年間かけて撮影した。農薬を拒み、老牛の引くリヤカーが移動手段という現代のおとぎ話のような実話が、不況で気落ちした韓国の人々を癒やしたらしい。
入場者5万人で大ヒットとされるドキュメンタリー映画で、20日に100万人を突破。地元紙は「ウォナン症候群」と呼ぶ。
当初、テレビ放送用に撮影した李忠烈(イチュンリョル)監督(43)は牛市場で老人と出会うまで約5年かけたが、その後はボツになっていた。「丑(うし)年」の今年、そんな作品自身の敗者復活も、人々の心を温かくするようだ。 (福田要)