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茶坪 生命力息づく隠れ里

2009年08月31日

 四川大地震で最大の被害を出した北川県曲山鎮から一山越えた安県茶坪郷。山奥にあり被害が「最大」ではないため注目度が低く、復興が遅れる。都市部に続くがけ沿いの道は、でこぼこの未舗装。かつての幹線道路は、堰(せき)止め湖の底に沈んだままだ。

 「落石あり。よく見て通行を」と看板がある。山腹の大小の岩が今にも落ちてきそうだ。運転手と顔を見合わせるが、一本道。一気に通り過ぎる。先では川の水が道路にあふれていた。まるで秘境ツアー。この先に、本当に街があるのか。

 未舗装道路を一時間走ると突然、白い建物が並ぶ街並みが出現した。こんな山奥でも1万人が暮らしている。被災者の多くは黙々とレンガを積んで住宅を再建していた。

 雨がぽつりぽつりとし始めた。川が増水したら帰れない。帰り道を急ぐ。案の定、行きには見かけなかった岩が、道路に転がっていた。中国では、タフでなければ生きていけない。 (小坂井文彦)