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台北 勇み足は手綱締めて

2009年09月21日

 国民党独裁時代、反乱罪などで民衆が拘束された施設が台北郊外に現存している。歴史的資産として一般開放されているが、最近、名称が「人権園区」から「文化園区」に変わった。「人権」の二文字は消えたのだ。

 拘束された人の多くが現在の野党民進党幹部になっている。野党陣営は「歴史を隠し、国民党を美化する行為だ」と馬英九・国民党政権に抗議した。

 政府の担当者によると、台湾には同様の施設がもう一カ所「文化園区」として整備されているので、名称をそろえただけという。命名基準があまりに能天気なだけに、馬総統は「正直に歴史に向き合う」と、「人権」の文字復活を指示した。

 馬総統にはぬれぎぬだったが、最近、気になる指摘がある。総統の指示がなくても「考えを察して周囲があれこれ案配してしまう」というのだ。9月から国民党の主席も兼務する馬総統。集中する権力に周りの配慮がエスカレートしないか、心配だ。 (栗田秀之)