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台北 升席の詳しさに軍配

2009年07月22日

 「名古屋場所が始まりましたね」。蒸し暑い夕方、支局にかかってきた電話の主は、台湾の著名な実業家、蔡焜燦さん(82)。

 大の親日家で、司馬遼太郎さんの「街道をゆく-台湾紀行」で案内役の「老台北(らおたいぺい)」として登場する好々爺(や)だ。受話器からは、人懐っこい声の背後から大相撲中継の音声が聞こえてくる。

 「行司だまりの横に和服姿の女性がいるでしょう」「花道脇の三列目の辺りにも和服の女性がいますよ」

 慌ててテレビのチャンネルをニュース専門局からNHKの海外放送に切り替えた。愛知県体育館の砂かぶりには、確かに蔡さん指摘の女性たちが取組に見入っている。

 しかも蔡さんは、1人や2人ではない和服の女性たちが、いつごろから名古屋場所を見続けているかも把握していた。まさに、かぶりつきだ。

 日本に関する蔡さんの博識にはいつも圧倒される。今回も一気に寄り切られた。 (栗田秀之)