2009年10月18日
昨年8月のグルジア紛争で激戦地となったグルジアの主要都市ゴリ。タマジ・ビルトベリシビリくん(15)は紛争以来、部屋に閉じこもり、パソコンゲームばかりしている。
グルジア軍人で、ゲームのライバルだった父は紛争で出撃し、行方不明になった。
母アナさん(31)によると、タマジくんがゲームをするのは「父親を忘れないため」だという。父の死を信じたくないタマジくんには思い出を“過去”にはできないのだろう。
タマジくんは「ロシアが憎い」と話す。当然だとは思うが、そんな言葉を聞きながら以前、グルジア軍が攻撃した南オセチアで出会った男の子のことを思い出した。「ロシアは英雄」というその子には、タマジくんの父たちが侵略者だった。
国際政治は複雑だ。あの紛争がなぜ起きたのか、それすらいまだ定まった答えはない。確かなのは、紛争が生み出した怒りや悲しみはいつまでたっても過去にはならないということだ。 (酒井和人)