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上海 動かぬ碑が語る戦禍

2009年10月17日

 上海事変の記念館は郊外にある。上海で暮らす以上「一度は」と思いつつ約2年。ようやく重い腰を上げた。記念館は、小ぎれいな公園の奥にたたずんでいた。

 「南京大虐殺記念館」などと比べ、日本軍の残虐さは強調されていない。それでも、寄せ書き帳には、「日本は絶対に許せない」と記されていた。

 見学を終え、10数キロ先の日本軍上陸記念碑へ。現地は更地になっていた。工場用地の造成という。地元の人が「政府の命令で、碑は残っている」と教えてくれた。ぬかるみを越えて歩くと、碑だけが残されていた。埋め立てで海岸線は変わり、移動に問題はなさそうだが、妙に律義だ。

 最後に訪れたのは、戦争で犠牲になった中国市民の碑。こちらも後に造成されたのだろう。技術学校の敷地内。週末で人影はなく、入るのをためらっていると、上海人運転手に手招きされた。上海も紛れもなく戦場だった。思わず碑に手を合わせた。 (小坂井文彦)