2009年10月18日
台風8号による甚大な被害に見舞われた台湾。災害対応をめぐる馬英九総統の言葉に、薄ら寒い違和感が感じられてならない。
死者数が、当局の公式発表では117人だった段階で、馬総統は「死者は500人以上」との見通しを示した。土砂崩れにのみ込まれた高雄県小林村の住民らを含めての見解だが、その時点で死亡が確認されていたわけではない。家族はどう受け止めたのだろう。
対応遅れに対する批判を受けて緊急に開いた記者会見。総統は、「復興に向けて頑張っていく。きちんと対応できることを知ってもらってから、評価してほしい」と訴えた。
今後の仕事ぶりを見てほしいと言われても、既に多くの人たちが犠牲になっているのだ。今後の仕事が評価されるとしても、その背後には失われた尊い命がある。
視察先で時折瞳をうるませた馬総統。しかし、本質的に、被災者側の視点が欠けているような気がしてならない。 (栗田秀之)