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マニラ 先進国への冷たい風

2009年10月30日

 「フィリピンは暑くて寒い国」。マニラに暮らす日本人が一度は耳にする言葉だ。というのも、こちらの冷房の効き方は半端ではないからだ。

 最初に覚えたタガログ語の一つは「冷房を弱めてください。寒いです」。レストランやタクシーなどで、この言葉をしばしば使う。長袖は必需品。支局も全館冷房のビルにあり、半袖では震えながら仕事をする羽目になる。窓の外ではヤシの木が揺れ、アイスクリーム売りがのんびり音楽を鳴らしているというのに。

 頭をかすめるのは、この国の排出している温室効果ガスがわずかだということ。先進国が享受している文明が、ここでは十分に行き渡っていない。彼らは日本人には我慢できない不便さに耐えている。強烈な冷房は、エネルギーを使いまくる先進国に対する数少ない復讐(ふくしゅう)の手段なのかもしれない-などと妄想しつつ寒さに耐えている。 (吉枝道生)