2009年11月04日
中国・雲南省の省都昆明から南へ車で12時間。ベトナムとの天保国境は熱帯植物が生い茂る山中にある。住民は、通行証さえあれば国境を自由に往来でき、多くは貿易をなりわいにしている。
その日、ベトナムから一人の少女が歩いて国境を越えてきた。10代後半だろうか。何の商売をしているか興味を持ち、話しかけた。片言の中国語は理解するようだったが、顔も上げず、逃げるように長屋の一角に入ってしまった。
そこには「マッサージ」の看板があった。出てきた経営者らしき男性が「30元(約400円)。遊んでく?」と声をかけてきた。彼女はここで売春していたのだ。
「中越間の荷物を運ぶ運転手らが常客さ」と地元住民。辺りには同じような店が10数軒ある。働き手はみな、貧しい家に生まれたベトナム人だという。
中越戦争から30年。両国国境は戦場から自由貿易区へと変化を遂げようとしているが、その陰にはこんな現実もある。 (朝田憲祐)