2009年12月18日
「あなたは日本の公務員ですか?」。ワシントンで米銀に銀行口座を開くとき、こんな質問をされた。パスポートは見せたし、米国での住所も記した。必要な情報はすべて知らせたはずだった。
日本や欧州での口座開設で、職業を聞かれた記憶はない。「おたくの銀行では、民間人の口座を粗末に扱うの? そんな風変わりな銀行は興味深いから、詳しく話を聞きたい」と皮肉を言うと、相手はあわてて「そんなことはありません。公務員は特に注意しなければならないだけで…」。
口座はでき、行員との会話も忘れていた。だが最近、米議会の「愛国者法」をめぐる議論を取材していて合点がいった。
テロ対策を名目に捜査当局の権限を拡大させた同法は、令状なしでの個人情報入手を米当局に認めている。外交官でもない外国人の銀行取引情報など、当局が求めればすんなり提供されてもおかしくない。 (嶋田昭浩)