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ニューヨーク 政治より人間ドラマ

2010年01月04日

 メトロポリタン・オペラ(ニューヨーク)の今季最大の話題作となりそうな「死者の家から」の新演出が11月12日に初日を迎えた。文豪ドストエフスキーのシベリア収容所体験に基づく「死の家の記録」を、チェコの作曲家ヤナーチェクがオペラ化し、1930年に初演された。

 演出はフランスのシェロー氏が担当。76年のバイロイト音楽祭100年記念公演の「ニーベルングの指環」で物質文明を風刺した舞台を提供し、賛否両論わき起こってカーテンコールが長時間に及んだのは有名な話で、米国での舞台に何を持ち込むか注目された。

 事前に劇場のインタビューで、ブッシュ前政権がテロ容疑者として外国人を拘束した収容所の問題に触れ「グアンタナモを(今回)論じる必要はない」と強調。過度に政治化した議論をけん制した。

 実際の舞台は、20世紀後半の中南米の軍事政権を思わせ、収容所内の生々しい人間模様に焦点が当てられていた。 (嶋田昭浩)