2010年02月05日
「あなた、紛争のある国から来たんでしょう」。インドネシア北西端バンダアチェにある両替所で、窓口の女性にいきなり聞かれ、戸惑った。
「どうして?」と聞き返すと、「だって、お札が汚いから」と笑う。ふだん暮らしているフィリピンで手に入る米ドル札は、どれもこれもスタンプがペタペタ押してあったり何か書き込んであったりと、確かに汚い。
「ずっと紛争が続いている。かつてのアチェのように」と答えたが、紛争があるとドル札にスタンプが押されるのだろうか。真偽は分からないが、実態を言い当てられたことは事実だ。
彼女は何枚かの札を調べ「みんなダメね」と宣言した。きれいな札に比べ、レートはかなり悪い。がっくりきていると、「早く紛争が終わるといいね」と慰めてくれた。アチェは30年にわたる紛争に終止符を打ったばかり。「本当に。アチェのようにね」と心から相づちを打った。 (吉枝道生)