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シカゴ 格差の名残示す会場

2010年02月17日

 2008年の金融危機は昨年、東部ボルティモアの歌劇団を倒産に追い込むなど、米国のクラシック音楽界にも打撃を与えた。それでもまだまだ突出した経済力は、世界中の演奏家を呼び寄せる。

 3月に85歳の誕生日を迎える巨匠ブーレーズ氏が指揮するシカゴ交響楽団の演奏会へ足を運んだ。1904年落成の「オーケストラ・ホール」は、教会のドームと宮殿をつなぎ合わせたようで、「国定歴史建造物」の一つ。だが、舞台の後方の席に座ってホール全体を見渡し、はっとした。

 1階一般席の頭上に数少ない桟敷席が大きくせり出し、舞台間近まで迫る。その上層の一般席は再び舞台から遠く離れている。欧米の主要な音楽会場で、ここまで桟敷席を優遇する構造は珍しい。

 前世紀初め、この地に花開いた文化があくまで富裕層向けだった名残だろう。それから100年。今の医療保険などの議論にも、相変わらず貧富の差がにじんでいる。(嶋田昭浩)