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ジェネラルサントス 職人技を引き継ぐ糸

2010年03月05日

 「まさか、この小さな船で?」「そう、これ」。フィリピン南部ミンダナオ島のジェネラルサントス港。岸壁に並ぶマグロ手釣り漁船を見て驚いた。

 近代的な巻き網漁船などとは違い、手釣り漁師が乗り込むのは、バンカーボートと呼ばれる色鮮やかな伝統的な船だ。この船で彼らは1カ月以上も航海を続け、巨大なマグロを1本の糸だけで釣り上げてくる。熟練を要する職人技だ。

 「すごく大変だよ。暑いときはつらい。雨のときもつらい」。始めて5年という若手漁師ジュナイデン・ブラロンさん(23)は言う。一帯の天気はほとんど暑いか雨かのどちらかだろう。日焼けした笑顔が美しい。

 岸壁の多くが近代的な漁船で占められていたが手釣りの漁師も3000人以上いるという。ブラロンさんは同国最南端のタウィタウィ近海から戻ってきたところ。「早く冷房のある家に行きたいよ」と笑った。

 (吉枝道生)