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安陽 おいしい「無名」 発見

2010年03月25日

 「名物の“ピザ”を食べてってよ」

 ピザ? 中国河南省北部の田舎町・安陽の大衆食堂。人なつこい女性店員に勧められたが、どうも怪しい。「字はどう書くのか」と尋ねると「皮渣」。いわゆる洋食のピザ(比薩)とはまったく違う料理だという。

 試しに注文した。出てきたのは、ぱっと見、ところてん。「サツマイモを原料にしたはるさめを細長く固め素揚げしてある」と店員。ネギ、ニンニク、ショウガ、干しエビなどを熱したごま油で絡めたソースが、香ばしいにおいを漂わせる。

 いただくと、サクッとした食感とほどよい塩味。はしが止まらなくなった。ビールも進んだ。

 そもそもは食べ残しのはるさめを再利用した家庭料理とか。「名物にうまい物なし」はこの国にも当てはまる。が、こと「安陽のピザ」には太鼓判を押したい。いや、無名だからこそ、うまいのか。   (朝田憲祐)