2010年04月26日
フィリピン国軍士官学校の今年の首席卒業生が、中部ビサヤ地方の貧しい家庭出身だったことが話題になっている。
子ども時代、1日に1回しか食事ができないことが何度もあり「おかずは塩だけ」と振り返る。「ビサヤ人は大きな夢を持ち成功のために何でもしよう」という彼の言葉に胸が詰まった。
マニラで低賃金の仕事につく人たちにはビサヤ出身者が多い。公園では、裕福な子どもを見守るヤヤ(子守)たちがビサヤ語でおしゃべりしているのが日常風景だ。
マニラに来ても生活費を稼ぎ故郷にわずかな仕送りをするのが精いっぱい-という例は多い。最低賃金以下の生活からの脱出は容易ではない。
友人がぽつりと言った。「いかに彼が優秀とはいえ、軍人にならざるを得ない現実があったのかも…」。紛争の続くこの国で、彼もまた命の保証のない人生を歩み出す。
(吉枝道生)