2010年07月07日
「わが国の失業率をご存じですかー?」「10%!」
「そんな政治に我慢できる?」「ノーン!」
パリの地下鉄の車内に駆け込んだダニエルさん(38)が地声で演説を始めた。六人の仲間が合いの手を入れた。左派の少数政党の新手の選挙運動だ。
午前十時。混雑する時間帯は避けるため乗客は十四人。苦笑いする人、携帯電話を片手に「うるさい」と怒る人。それでも全員がチラシを受け取った。
地下鉄は二分で次の駅に到着。一行はいったんホームに飛び出し、全力疾走で隣の車両に移って演説を繰り返した。
「ほんのひとときだけれど、このやり方なら有権者は逃げていかない」とダニエルさん。街頭演説をしてもなかなか足を止めてもらえない悩みは、どの国の政党も一緒らしい。
アコーディオン弾きや物ごいと同様、この街の地下鉄の新名物になるかもしれない。 (清水俊郎)