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ソウル 時代に乗れない死語

2010年07月01日

 「トークンがたくさん手元に残っているけど、まだ使えるのかしら」。日本で暮らす妻が電話口で、懐かしい言葉を投げてきた。

 トークン-。初めてソウルに駐在していた15年ほど前、路線バスを利用するには、5円玉を小さくしたような専用コインを事前に買い、乗車した。いまや当地では地下鉄、路線バスのいずれに乗るにも、共通利用の電子交通カードがあれば事足る。「トークン」は死語になった。

 留学期間を合わせ韓国滞在が3年になる駐在員は「ハプスン」という言葉を知らなかった。「合乗」のハングル読みで、タクシーの相乗りを言う。もともと違法行為だが、同じ方向へと向かう市民には、便利なタクシー乗車方法だった。当地で行われなくなって10年近くになろうか。

 ただ、深夜になるとソウル中心街では今もなお、タクシーが不足し、帰宅に困ることがしばしばある。死語となったハプスンが恋しくなる。

(城内康伸)