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台北 強い遺志引き継いで

2010年08月04日

 国民党独裁下で台湾の独立と民主化を訴え、当局による身柄拘束を潔しとせずに焼身自殺した言論人、鄭南榕氏。功績を顕彰する鄭南榕基金会は台北市内の閑静な住宅街に事務所がある。

 その一角に焼けただれた一室。1989年4月7日に鄭氏が自ら火を放った場所をそのまま保存した。「遺体はいすに座ったままの姿でした。強い意志を示しています」と妻の葉菊蘭さん(61)。

 話をうかがううち、葉さんは涙をうかべた。夫の遺志を継ぎ立法委員(国会議員)を経て行政院副院長(副首相)など陳水扁前政権の要職も務めた。「自分は強い人間だと思ったけど…。ずっと愛した人だから」

 事務所には鄭氏の写真が多数展示されている。その姿から「彼は口でどうこう言うだけじゃない『行動哲学家』」(葉さん)の信念が伝わってくる。その信念が葉さんや台湾の人々に引き継がれている。 (栗田秀之)