2010年08月25日
2002年5月に中国遼寧省瀋陽の日本総領事館に駆け込んだ、北朝鮮住民らの“脱北生活”を物語る当時の所持品を紹介した展示会が韓国ソウル市内であった。
会場入り口近くには大きさが10円玉ほどの折り鶴が山のように積まれていた。その数なんと50万羽。山の高さは1メートル近く。中国の潜伏先で韓国亡命まで脱北家族十数人が来る日も来る日も、折り続けたものだ。
「中国公安に捕まる可能性があり、彼らは外出できなかった。韓国に持って行くと、10羽10ウォン(約0.8円)で売れると言って、折るよう勧めたもの」。脱北支援に私財をなげうった文国韓さんが説明してくれた。総額4万円になる折り鶴の代金は実は、文さんのポケットマネーだ。
「どうか私に翼をください」「自由が欲しい」-。折り鶴すべてに記された願いはきっと、北朝鮮に暮らす多くの人々の声を代弁するものなのだろう、と思う。
(城内康伸)