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サンカムペン 騒乱離れ静かな祈り

2010年06月13日

 タイのタクシン元首相派デモ隊が制圧された後、元首相の生まれ故郷である同国北部の小さな町サンカムペンに行った。人に教えてもらって訪れた元首相の実家は、シルク製品店を営んでいる。

 ひっそりと静まり返った店内に元首相の大きな写真が掲げられ、おば(93)をはじめとする親せきの女性たちが車座に座っていた。「(騒乱は)テレビで見たけど、私たちは年寄りだし政治のことは分からないよ」。年老いた女性たちはそうつぶやいてほほ笑んだ。

 デモ隊が続々と故郷に帰り始めていた。騒乱の死傷者は1000人を超え、町では現政権への怒りや不満、悲しみの声が渦を巻いていた。

 女性たちは町に漂う激しい感情に距離を置くかのように、うす暗い店内にじっと座っていた。「もう質問しないでおくれ。私たちはお寺に行ってお祈りして静かに暮らしているだけなのよ」。お礼を言って外に出ると、後ろから「よい旅を」と静かな声が聞こえた。 (吉枝道生)